最新記事

外国人労働者

日本人が持つイメージより、はるかに優秀で勤勉な外国人労働者たちのリアル

2020年7月22日(水)13時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

学生アルバイトが働けるのは、1週28時間が限界だ。雇用する側は気をつけていても、ダブルワークをされるとわからない。ダブルワークの先が一切届出をせず、源泉の納税もしていなければ、入管にはわからない。他の企業で働いていて、その結果28時間を超えた場合でも、雇っている側も不法就労助長罪になる。この罪は過失であっても問われるので、企業側としては、ダブルワークの禁止規定を使うなりして対応策をとるしかない。

彼の場合は明らかなオーバーワークなので褒められたことではないのだが、それ以上にこの中国人の若者の人生設計には驚かされた。その後、彼はダブルワークを禁止されたのだが、今度は化粧品を安く仕入れて中国へ送る副業でしっかりと稼いでいた。最近は中国の輸入関税適用が厳しくなり、化粧品も難しくなってきたので別のビジネスを考えるという。知恵も体も使って稼いでいるわけで、たくましくしたたかである。

副業をしている日本人も確かにいる。本業はそこそこで、副業で稼ぐという話も聞く。私も独立しようとしていたころは本業に集中できず、それに近かった。しかし、彼らの場合はそれとは違う。本業でも、副業でも、仕事で手を抜いているわけではない。「日本人は勤勉だ」というフレーズがむなしく聞こえる。

日本人より優秀な偽装難民の労働者たち

ある自動車部品の工場を経営している会社からの相談だった。数年前に難民申請者を何人か雇った。国籍は様々である。彼らはみな、おそろしく優秀だという。どこが優秀かというと、まず英語が読める。自動車部品のオーダーは、海外からのものもたくさんある。それらのオーダーは当然英語で入ってくる。現場の製造過程に落とし込むには、英語が読める上に工程の組み方や技術の知識もなければならない。

「日本の方が技術は高いから、彼らへの訓練は必要なんですが、覚えるのが圧倒的に早いんです」すでに、工場を一つ任せてもいいと思う人材もいるという。しかし、難民申請者からの変更は、受理されても許可されることはありえない。「今はいいんだけど、いずれ審査が終わればいられなくなるんですよね。その前にどうにかならないもんでしょうか」「彼らは本当に難民なんですか」この質問には、社長さんは口を濁した。

残念ながら、一度帰国してもらうしかない。難民審査と在留資格の審査は別のものである。以前には難民申請者から別の資格への変更が認められたこともあるが、これはすぐに認められなくなった。認めてしまえば、学校へ通わず働き続けて資格を失った学生が、難民審査経由で別の資格を得られることになるからだ。(筆者注:2020年4月1日より特定技能試験の受験資格が「在留資格がある外国人」に拡大されており、難民申請者から特定技能への変更が認められる可能性がある。)

とはいえ、会社側からしてみると、「日本人よりずっと優秀じゃないか、なぜ駄目なんだ」ということになる。社長の持参した彼らの履歴書を見させてもらったが、全員大卒だった。技術系の出身もいた。彼らが難民としてしか職に就けないというのももったいない話だ。

もっとも、最近は現地で日本企業の合同説明会なども開かれ、企業側もそこで積極的に採用する傾向もある。今後は正規ルートで入ってくる外国人も増えるかもしれない。彼らのような人材が特定技能をとって現場に入り、成長して「技術・人文知識・国際業務」に資格変更した上で幹部になることもあるだろう。

<参考記事:永住者、失踪者、労働者──日本で生きる「移民」たちの実像

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中