最新記事

新型コロナウイルス

今こそG20が協調し、途上国崩壊を食い止めよ

Now or Never

2020年4月17日(金)15時00分
ゴードン・ブラウン(元英首相)、エリック・バーグロフ(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授)、ジェレミー・ファラー(元オックスフォード大学教授)

インドの全国封鎖を前に故郷へ帰ろうとバスターミナルに殺到する人たち(3月28日、ガジアバード) ANUSHREE FADNAVIS-REUTERS

<アフリカやアジア、中南米の村落に広がれば壊滅的結果に──世界は上限なき資金提供という「脱出戦略」をすぐまとめるときだ>

新型コロナウイルス感染症が、世界で猛威を振るっている。だが、各国の対応は猛烈な感染拡大のスピードに追い付いておらず、失われる必要のない多くの命が失われ、他の医療問題は忘れ去られ、社会と経済の両方が壊滅的な打撃を受けようとしている。

そこで筆者3人は4月6日、G20諸国・地域に対し、足並みのそろった対策を直ちに求める公開書簡を発表し、医療、経済、政治、市民社会など幅広い領域のリーダーの賛同を得た。今回の危機が、公衆衛生と経済の両面で史上最悪の惨事に発展するのを防ぐため、80億ドルの拠出を求めている。

2008年の世界金融危機では、G20首脳は連携した対応を見せた。また、過去に津波や内戦で非常事態が生じたときも、多くの国が手を組み、リソース提供に必要な拠出国会議を開いてきた。

今回の新型コロナ危機では、その両方、つまり国際支援を調整するG20の作業部会と、その支援を有効にする拠出国会議が必要とされている。

2008年には、世界的な信用危機に対処することで、目先の経済危機を乗り越えることができた。だが今回の経済危機は、公衆衛生上の非常事態が解決しなければ終わらない。そして公衆衛生上の非常事態は、各国が単独でウイルスと戦っていては終わらない。全ての国がこのパンデミックを克服する必要があるのだ。

確かに新型コロナは、富裕国か否かを問わず、あらゆる国の医療システムを圧迫している。だが、この感染症がアフリカやアジア、中南米の村落にまで広がることを許せば、壊滅的な結果となり、撲滅は難しくなり、別の疾病の流行を引き起こす恐れさえある。

コストを避ければ破滅

この危機に早期に終止符を打つ唯一の方法は、私たちが長年怠ってきたこと、つまり公衆衛生機関と科学機関、そして経済機関への思い切った投資をすることだ。

各国首脳はまず、WHO(世界保健機関)が今年いっぱい最も重要な活動を続けられるように、10億ドル拠出するべきだ。さらに70億ドルを使って、きちんとした診断と治療とワクチンの開発、製造、流通を確保するため、国際的な官民連携機構「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)」をサポートするべきだ。パンデミックに終止符を打つためには、こうした進歩に全ての国がアクセスできるようにすることが、非常に重要だ。

人工呼吸器や防護服、マスクなど、医療物資のニーズを満たす資金も必要だ。既存の生産能力がもたらす医療物資を奪い合うのではなく(それは価格を高騰させるだけだ)、各国が連携して生産能力を拡大し、グローバルな生産と調達を図るべきだ。

実用可能なワクチンが登場した場合は、官民連携団体「Gaviワクチンアライアンス」などを通じて、最貧国にもワクチンが行き渡るようにする必要がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中