今こそG20が協調し、途上国崩壊を食い止めよ
Now or Never
感染症の世界的権威が集まるインペリアル・カレッジ・ロンドンの予測では、最も楽観的なシナリオでも、新型コロナ感染症による死者はアジアで90万人、アフリカで30万人に上る見込みだ。
途上国は近代的な医療システムがないだけでなく、社会的なセーフティーネットも不十分だ。最重要物資を提供し、スタッフを採用し、国として立ち直る力を強化するためには、少なくとも350億ドルが必要だろう。
WHOによると、世界の国の約30%は、新型コロナ感染症に国として対応する準備や計画が全くなく、何らかの感染防止策がある国も50%足らずだ。医療施設にさえ清潔な水や下水設備、衛生基準が整っていない国も多い。富裕国でも、必要な数の7分の1しか救急病床がないとされるが、貧困国でははるかに少なく、全くない国もある。
各国政府は、景気悪化への対応も迫られている。ここでも、信用収縮が支払い能力の危機へと発展し、世界的な不況が大恐慌に発展するのを防ぐためには、財政と金融と貿易の各領域で、連携の取れた措置を講じる必要がある。
一部の国は既に景気刺激策を打ち出しているが、全ての国がこれに参加すれば、はるかに大きな効果を見込めるだろう。また、余剰人員の大量解雇を抑制するためには、金融機関が迅速に政府保証融資を実行して、企業と従業員が必要とする現金を積極的に供給することが極めて重要だ。
一方、最貧国には特別な経済支援が必要だ。国際社会はまず、これらの国の債務返済を今年は免除するべきだ。これにはアフリカ諸国が抱える440億ドルの債務が含まれるが、別途1500億ドル以上の支援も必要になるだろう。
世界銀行は融資上限を維持しながらでも、各国に対する支援を強化できる。しかしそれだけでは不十分だろう。世界金融危機が起きた2009年、世銀の融資額は160億ドルから460億ドルへと急増した。これと同レベルの資金供給を、今すぐ発表するべきだ。
IMFは、できる限りのリソースを動員すると表明している。具体的には5000億〜6000億ドル相当の特別引き出し権(SDR)を割り当てるべきだろう。
時間はあまりない。理想はこれらの計画を迅速にまとめて、4月16〜17日に予定されるIMFと世界銀行の合同開発委員会(テレビ会議での開催となる)で、正式に確認されることだ。それが世界にとって最も現実的な「脱出戦略」となるだろう。
確かにそのコストは高く感じられるかもしれない。だが、その負担から逃げれば、世界は壊滅的な結果を逃れられなくなるかもしれない。
<本誌2020年4月21日号掲載>
【参考記事】新型コロナ:「医療崩壊」ヨーロッパの教訓からいま日本が学ぶべきこと
【参考記事】井戸水に頼る人々や売春婦──外出制限を守れない貧困層がアフリカで新型コロナを拡散する
2020年4月21日号(4月14日発売)は「日本人が知らない 休み方・休ませ方」特集。働き方改革は失敗だった? コロナ禍の在宅勤務が突き付ける課題。なぜ日本は休めない病なのか――。ほか「欧州封鎖解除は時期尚早」など新型コロナ関連記事も多数掲載。