最新記事

ベビーブーマー

ミレニアル世代に知ってほしいベビーブーム世代の功績

OK, Millennials

2020年4月10日(金)16時15分
サム・ヒル(作家、コンサルタント)

アメリカでは1970年にEPAが設立され、国内法が整備された。国際社会では、1972年にロンドンで「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」が採択された。1987年のモントリオール議定書により、オゾン層を破壊する恐れのあるフロンガスが禁止された。

新しいテクノロジーは、より効率的でクリーンな産業を生んでいる。環境団体の活動や、市民の意識や責任感も新しいレベルに進んでいる。電気自動車や太陽光発電などの技術が広く普及し、風力発電は今やアメリカの電力の約7%を担う。

環境問題の解決には、広範かつ持続可能な努力が必要だ。この50年間に学んできたことを生かしていこう。

カルチャー

現代はテレビや映画、音楽に本など、ぱっと思いつく限りのあらゆるジャンルの文化の黄金期だ。優れた作品が生まれ、優れたパフォーマーが活躍している。いずれも私たちベビーブーム世代のおかげだ。

1970年代以前、アメリカにおける文化はいろいろな意味で強いコントロール下にあった。どんな音楽を、本を、映画を作るかは、それぞれの分野の大手企業が握っていた。

表現や内容についての規制は、表向きにも隠れた形でも存在した。黒人音楽や黒人アーティストの曲を流すのをラジオ局が拒否したこともあったし、映画や音楽、テレビ番組も規制に縛られていた。全米放送協会が1952年に制定したテレビの倫理規定では、セックスやリアルな暴力、神や宗教への不敬を描くことや、捜査機関や家庭生活に対するネガティブな描写が禁じられていた。

だがわれわれベビーブーム世代は規則が嫌いだ。私たちはジャンル間の壁を壊し、ロックとフォークとブルースとクラシックを混ぜて音楽を作った。映画でもセックスを、激しい息遣いや情熱的な見つめ合いだけでなく、真正面から描写した。

神聖不可侵なものの存在も認めなかった。1970年に創刊されたユーモア雑誌「ナショナル・ランプーン」や、1975年に始まったバラエティー番組『サタデー・ナイト・ライブ』は、世の中のあらゆるものを笑いのネタにした。ドラマの世界でも『ヒル・ストリート・ブルース』のように新しいスタイルの作品が生まれた。そして検閲に風穴を開けた。テレビの倫理規定は1983年に撤廃された。

確かにテレビやラジオで流される音楽には今も規制があるし、映画にもレイティングの審査がある。それでも現代の文化がこれまでになくエキサイティングで活気に満ちているのは、私たちベビーブーム世代と、デジタル化やインターネットの技術のおかげなのだ。

テクノロジー

この50年、私たちベビーブーム世代に牽引されてテクノロジーは爆発的な進化を遂げた。特許の出願件数は1969年の約7万2000件から2019年は約5倍に増えた。昼も夜も週末も、90秒に1件のペースだ。

1997年にダラス連邦準備銀行のマイケル・コックスとリチャード・アルムが発表したエッセーによると、自動車や電気、電話など19世紀末から20世紀初頭の主要なイノベーションは、大衆市場向け製品になるまでに約50年を要した。

20世紀半ばには、それが約25年に短縮された。ラジオ、テレビ、ビデオデッキ、電子レンジなどだ。そして最新のイノベーションは、パソコンや携帯電話、抗鬱薬、インターネットなど、大衆市場化に10年もかからなくなった。

つまり、私たちは「未知の」テクノロジーを経験した最初の世代だ。1919年から69年にタイムスリップした人は、電子レンジ以外の家電は全て、何に使うのか想像がつくだろう。しかし、1969年から現代にタイムスリップした人は、私たちが使っているデバイスの半分を認識できないに違いない。ノートパソコンも、スマートスピーカーも、Wi-Fi用ルーターも。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ関税、英ではインフレよりデフレ効果=グリー

ワールド

ロシア中銀、金利21%に据え置き 貿易摩擦によるイ

ビジネス

米、日本などと「代替」案協議 10%関税の削減・撤

ワールド

トランプ氏側近特使がプーチン氏と会談、ロシア「米ロ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 3
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 4
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 8
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中