最新記事

ベビーブーマー

ミレニアル世代に知ってほしいベビーブーム世代の功績

OK, Millennials

2020年4月10日(金)16時15分
サム・ヒル(作家、コンサルタント)

人権と多様性の受容

1969年当時、同性愛で黒人の女性(もしくは、そのうち1つが当てはまる人)が生きていくのは大変だった。当時のアメリカ社会、特に大都市以外の地域と南部の現実は、君たちには想像し難いだろう。

1967年まで一部の州には異人種間の結婚を禁じる法律があった。1968年まで多くの都市では黒人は日没後に出歩くことも許されなかった。

1969年には女性の賃金は男性の賃金の59%にすぎなかった。今では82%で、同一にはなっていないが、改善はされた。同性愛は1970年代初めまで精神疾患と見なされていた。連邦最高裁判所が1973年に「ロー対ウェード」判決を出すまで、多くの州では人工妊娠中絶は犯罪だった。

今のアメリカも公正で平等な社会には程遠いが、1969年よりはだいぶましになっている。ベビーブーム世代が頑張ったからだ。私たちは投票し、アジ演説を行い、デモをした。時には暴動も起こした。1968年のシカゴ、1969年のニューヨーク(ストーンウォールの反乱)などだ。

そのために高い代償も払った。投獄された仲間もいる。1970年にオハイオ州のケント州立大学で起きた事件では、抗議集会に参加した学生が州兵に銃撃され死亡した。

今では不公正な扱いには堂々と抗議できるし、法的手段を取ることもできる。差別や偏見はなくせなかったが、大手を振ってまかり通っていた不平等や不公正を「恥ずべき違法行為」にすることはできた。

環境と気候変動

君たちミレニアル世代は、深刻な環境問題に直面している。観測史上最も暑かったのは2016年と19年。世界の海には約1億6500万トンのプラスチックゴミが漂い、「1日に」推定200種の生物が絶滅している。こうした危機に対策がほとんど進んでいない理由は、政治だ。

magf200409_Millenials2.jpg

BERNT OVE MOSS-EYEEM/GETTY IMAGES

もっとも、環境汚染は昔からあった。1969年6月22日、米オハイオ州のカヤホガ川で火災が発生した。まさに川から炎が上がり、黒く泡立った水から汚染物質の煙が巻き上げられた。スミソニアン誌によると十数回目の火災だった。

アメリカの都市は排ガスによる大気汚染が深刻で、ガスマスクを装着する歩行者までいた。ロサンゼルス(LA)の別名は、臭いにちなんで「smelLA」。大気汚染に関連する病気は数万人の命を奪った。ロンドンでは1952年12月、家庭の暖房用石炭で濃厚なスモッグが発生し、5日間で約4000人が死亡した。

工場は地面や水路に廃棄物をそのまま投棄していた。化学メーカーのフッカー・ケミカルは、1953年に廃棄物処分場として使っていたラブ・キャナル運河を埋め立てて、ニューヨーク州ナイアガラフォールズ市に売却。住宅や小学校が建設された。

1972年以前は、原子力発電所から核廃棄物を運び出して船に積み、海に投げ捨てていた。1982年に科学者は、南極上空のオゾン層に巨大な「穴」が開いたように見えることに気が付いた。太陽放射から私たちを守る成層圏が脅かされていた。

現在、カヤホガ川では人々が釣りを楽しんでいる。ロサンゼルスの人口は50年間で300万人増えたが、大気汚染は約40%軽減した。米環境保護庁(EPA)によると、「1970~2018年に米経済は275%成長し、6つの主要な(大気)汚染物質の排出は74 %減少した」。

汚染が深刻だった廃棄物集積所の多くはきれいになり、核廃棄物の海洋投棄は行われていない。オゾン層の穴は2019年に観測開始から最も小さくなっており、2075年には閉じるとみられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、6月以来の高水準=ベー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中