「恐怖の未来が見えた」NYの医師「医療崩壊」前夜を記す日記
Inside NYC Emergency Rooms
■3月30日 キーン医師
これで4日連続のシフト。今日が何日だか、もう分からないくらいだ。でも今日はCOVIDではない患者を診ることになっている。あれ以外の患者がこの病院にいるなんて、ほとんど忘れていた。
実際、COVID以外の患者はいつもより少な過ぎる。どこに行ってしまったのか。みんな用心して家から出ず、この病院に近づかないようにしているのなら、それもいい(なにしろ現時点で、ここの入院患者の75%強はCOVIDか、その疑いありだ)。
しかし患者が病院を敬遠するのは問題だ。今は街の開業医がほとんど休業中だ。患者が我慢して治療を遅らせれば症状の悪化を招き、もっと面倒なことになる。
ここでもベッドの空きは減るばかりだが、救急車の出動要請は急激に増えているという。しかし救援が来るかもしれない。
今日、海軍の病院船「コンフォート」が埠頭に接岸した。COVID以外の患者はそちらに移送される。セントラルパークにも野外の仮設病院が設営された。国際会議場のジャビッツセンターに続いて、全米オープンの会場となるビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンターの敷地も、仮設病院に転用されることが決まっている。
■3月30日 セリーノ医師
今日は言葉が出ない。
朝5時に起きて救急病棟に入り、いま真夜中になってようやくベッドに入るところ。
もう、ボロボロ。
■3月31日 セリーノ医師
今朝は目覚めた時から昨日のことを考えている。少しは眠れて、悪夢も見なかったのがせめてもの救い。昨日の救急病棟はひどかった。内科のフロアには空き部屋がなく、運ばれてきた患者は肩が触れ合うほどぎゅうぎゅう詰めの状態だった。点滴用のポールは1本を5人でシェアした。みんな咳をしていた。安全な場所はどこにもない。検査は全員が陽性だった。みんな、怖がっている。
私たちだって怖い。物資の供給が不足している。酸素吸入が必要な患者が3人いたのに、空いている吸入器が1台もない状態が30分続いた。
あの瞬間、私たちを待ち受ける恐怖の未来が見えた。仕事は病人のケアだけじゃない。今後は誰なら酸素吸入を一時中断しても大丈夫かを判断し、どうすればシェアできるかを考え、誰を最優先で人工呼吸器につなぐかを決めていかねばならない。