新型コロナウイルスの都市封鎖で経済悪化 インドネシア、最悪520万人が失業の危機
東南アジアで新型コロナウイルスの感染者・死者とも最大になったインドネシア。新生児はおくるみの上からフェイスシールドを装着。Antara Foto/Rivan Awal Lingga - REUTERS
<感染拡大防止のため経済活動停止を打ち出したインドネシアだが、それは失業・倒産というもう一つの危機を生み出した>
世界に蔓延する新型コロナウイルスの感染拡大が続く東南アジアのインドネシアでは、4月17日に感染者数5923人、死者520人となった。死者数では以前から域内最大だったが、感染者数でもフィリピンを抜いてASEAN加盟10カ国で最大の感染国だ。
そんななか、スリ・ムルヤニ財務相は17日までに「新型コロナウイルスの影響でこれまでに約120万人が失業する事態になっており、今後最大で失業者は520万人に上る可能性もある」との悲観的な見方を示し、失業者や生活困窮者への救済策をさらに強化する姿勢を明らかにした。インドネシアでは新型コロナウイルスの感染拡大に従い、失業者を含めた労働問題が大きなそして喫緊の経済対策として浮上している。
インドネシア政府や地方自治体は首都ジャカルタをはじめとして主要都市やジャワ島内各州で実質的な都市封鎖にあたる「大規模社会制限(PSBB)」を発令。人やモノの移動制限や特定分野以外の企業活動の一時停止、外出自粛、マスク着用、公共交通機関の運行制限・乗車制限などを実施している。
特に感染者、死者ともに最も多い人口約3000万人を擁するジャカルタの事態は深刻だ。移動制限にも関わらず、地方の実家や親戚を頼って「疎開」する人々で長距離バスのターミナルや鉄道始発駅が混雑している。このため逮捕や処罰といった強制力をほとんど伴わないPSBBの効果を疑問視する声もでている。
「密閉空間」であり「密集場所」でもあるバスや列車の客車に長時間乗車することは新型コロナウイルス感染の懸念や帰省先での感染拡大の可能性もあり、政府や州政府は「現在いる場所での自宅待機」を必死に呼びかけている。
新型コロナ影響の影響でマイナス成長に
主要都市がPSBBを発令し、食料、エネルギー、流通部門などを除いた各業種が営業自粛や営業時間短縮をしたことで、多くの失業者が街に溢れる結果を招いている。
4月17日にはスリ・ムルヤニ財務相がテレビ会議で「新型コロナウイルスの影響によるフォーマルセクターでの失業者はこれまでのところだけで120万に上る。新たな経済対策で失業、企業倒産対策をさらに強化する必要がある」と述べた。
労働省の発表によると、これまでに新型コロナウイルスの感染拡大が原因で新たに解雇あるいは無給での自宅待機などの措置を講じた企業は7万4430社に上り、その結果としての失業者は119万9452人に達している。
現状のままで事態が推移した場合は新型コロナウイルスの影響による失業者は最大で520万人に拡大すると財務省や労働省は試算して大きな懸念を表明している。
しかしこれはあくまでフォーマルセクターの数字で、行商人や屋台などの露天商、日雇い労働者、個人のバイクタクシーや自転車タクシーの運転手などのいわゆるインフォーマルセクターでの失業者は含まれていない。
こうしたインフォーマルセクターや新型コロナウイルスの影響がでる以前の失業者を含めたインドネシア全体の完全失業者は最大で約1600万人に上るという試算もある。こうした状況に伴いインドネシアの経済成長は2019年の5,0%プラスから2020年は0.5%マイナスに転ずると予想されている。