最新記事

韓国社会

韓国、新型コロナウイルス感染拡大の元凶? 信者24万人の「新天地イエス教団」とは

2020年3月7日(土)18時30分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

映画やドラマの題材になるカルト

韓国では、新興宗教のことを「사이비(サイビ)」と呼ぶ。もともとは「似て非なるもの、まやかし、ニセモノ」のことを指すが、今ではサイビと言えば新興宗教のことを指すことが多い。しかもカルトのようなエセ宗教というイメージだ。

日本よりも熱心な信者が多い韓国では道ばたで勧誘活動に遭遇することも多い。筆者も以前韓国に在住していた頃には、よく声を掛けられた。一度、出入国管理局でビザ手続きを行うために長時間座って待っていると、「隣の教会から来ました」と女性が横の席に座って勧誘が始まった時にはさすがに驚いた記憶がある。また、明洞などの観光地や地下鉄で、一人大きな十字架を持って「キリスト教を信じなければ地獄へ落ちる」など大声で話し歩いてる人などを見かけることもあった。

そんな韓国では、宗教は日本よりももっと身近なものであるがゆえ、カルト的宗教の恐怖も近くに存在するようだ。

韓国映画やドラマでも、この手の恐怖は度々登場している。昨年公開された『サバハ』は、主演のイ・ジョンジェが演じるパクが、仏教系新興宗教のことを調べて行くうちに、裏に隠された秘密を暴くというミステリーである。パクは、怪しい宗教を捜査する探偵のような職業で興味深く、このような職業も存在するのかと疑問に思ったが、もちろん、これはフィクションだ。だがこのパクの役は、新興宗教の反社会性を暴いた宗教問題研究家タク・ミョンハンという実在の人物をモデルにしたことで知られている。

ちなみにこの映画『サバハ』は、公開時に新天地イエス教会から抗議を受けている。劇中、イ・ジョンジェ演じるパクのセリフの中で、韓国内の異端新興宗教を説明するセリフがあるのだが、ここで新天地イエス教会を例に出しているため、新天地イエス教会側は「教会を名誉棄損した」と主張。結局、公開時にはこのセリフ部分をアフレコで変更し封切られることとなったという。

また、『新感染:ファイナル・エクスプレス』のヨン・サンホ監督が制作した、2014年公開アニメ映画『我は神なり』は、小さな村にできたインチキ教団にのめり込む村人たちを、トラブルメーカーで嫌われ者の主人公が救おうと奮闘する話だ。日本でも公開済みだが、後味の悪い映画として一部韓国映画ファンの間で話題となった。

コロナのせいで、今世界は混乱し始めている。こんなときこそ、信者を増やしたい宗教団体は人々の不安な気持ちを利用して、勧誘活動を活発に始めるだろう。何の宗教を信じるか、または信じないかは個人の自由である。しかし、混とんとした世の中だからこそ、何を信じるべきか冷静に考え直す必要がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相、中国首相と会話の機会なし G20サミット

ワールド

米の和平案、ウィットコフ氏とクシュナー氏がロ特使と

ワールド

米長官らスイス到着、ウクライナ和平案協議へ 欧州も

ワールド

台湾巡る日本の発言は衝撃的、一線を越えた=中国外相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 5
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中