中国を笑えない、新型ウイルスで試される先進国の危機対応能力
The West Is About to Fail the Coronavirus Test
トランプは既に、ダイヤモンド・プリンセスでウイルスに感染したアメリカ人の帰国に怒ったと伝えられている。アラバマ州選出のリチャード・シェルビー上院議員(共和党)は2月23日、アラバマ州内の施設に感染者を移送する計画を中止させてやったと誇らしげにツイートした。アメリカ人の感染者が増え始めたら、トランプの信条の「アメリカ・ファースト(アメリカ人優先)」は、「感染していないアメリカ人ファースト」に変容しないだろうか。そしてウイルスに感染した者はアメリカ人でもお構いなく収容所に放り込まれるのではないか。
ヨーロッパでは、複数の自治体が事実上の封鎖状態になっているイタリアで、同国の極右政治家マッテオ・サルビニが、EU域内の移動の自由を定めたシェンゲン協定を一時的に無効にし、国境を閉鎖すべきだと主張した。中国人に対する差別や攻撃は、ヨーロッパ全体で増加している。
ウイルスか人災か
新型コロナウイルスも流行が終わってみれば、インフルエンザと似たような致死率に落ち着くかもしれない。もちろん、はるかに悪い可能性もある。問題は、自国に死者が出て、さらに感染が拡大するにつれて、恐怖に震え上がった国民からさらなる行動を求める声が強まって、政治指導者がそれに屈することだ。そこでは移動の自由や人権も不当にふみにじられかねない。
皮肉なのは、世界の防疫や医療の技術はかつてないほど高く、未知の疾病に対抗する力は十分あるということだ。エボラ以降、世界のパンデミック対策は大きく進歩した。ウイルス分析のための専門家を即座に動員することもできるし、ワクチンや治療法の開発をスピードアップするための仕組みもできている。
だが世界は、公衆衛生のためとは真逆の恐怖の政治に捕らわれている。アジアやヨーロッパやその他の国々でも、恐怖が政府の決断を左右している。各国政府が国際協調に乗り出し、科学的証拠に基づいた政策決定を始めない限り、独裁国家と同じく民主主義国家も、ウイルスと同じくらい大きな人災を被ることになるだろう。
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