最新記事

新型コロナウイルス

中国を笑えない、新型ウイルスで試される先進国の危機対応能力

The West Is About to Fail the Coronavirus Test

2020年2月27日(木)19時30分
イーサン・ギレン(健康問題コンサルタント)、メリッサ・チャン

トランプは既に、ダイヤモンド・プリンセスでウイルスに感染したアメリカ人の帰国に怒ったと伝えられている。アラバマ州選出のリチャード・シェルビー上院議員(共和党)は2月23日、アラバマ州内の施設に感染者を移送する計画を中止させてやったと誇らしげにツイートした。アメリカ人の感染者が増え始めたら、トランプの信条の「アメリカ・ファースト(アメリカ人優先)」は、「感染していないアメリカ人ファースト」に変容しないだろうか。そしてウイルスに感染した者はアメリカ人でもお構いなく収容所に放り込まれるのではないか。

ヨーロッパでは、複数の自治体が事実上の封鎖状態になっているイタリアで、同国の極右政治家マッテオ・サルビニが、EU域内の移動の自由を定めたシェンゲン協定を一時的に無効にし、国境を閉鎖すべきだと主張した。中国人に対する差別や攻撃は、ヨーロッパ全体で増加している。

ウイルスか人災か

新型コロナウイルスも流行が終わってみれば、インフルエンザと似たような致死率に落ち着くかもしれない。もちろん、はるかに悪い可能性もある。問題は、自国に死者が出て、さらに感染が拡大するにつれて、恐怖に震え上がった国民からさらなる行動を求める声が強まって、政治指導者がそれに屈することだ。そこでは移動の自由や人権も不当にふみにじられかねない。

皮肉なのは、世界の防疫や医療の技術はかつてないほど高く、未知の疾病に対抗する力は十分あるということだ。エボラ以降、世界のパンデミック対策は大きく進歩した。ウイルス分析のための専門家を即座に動員することもできるし、ワクチンや治療法の開発をスピードアップするための仕組みもできている。

だが世界は、公衆衛生のためとは真逆の恐怖の政治に捕らわれている。アジアやヨーロッパやその他の国々でも、恐怖が政府の決断を左右している。各国政府が国際協調に乗り出し、科学的証拠に基づいた政策決定を始めない限り、独裁国家と同じく民主主義国家も、ウイルスと同じくらい大きな人災を被ることになるだろう。

From Foreign Policy Magazine

20200303issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月3日号(2月26日発売)は「AI時代の英語学習」特集。自動翻訳(機械翻訳)はどこまで使えるのか? AI翻訳・通訳を使いこなすのに必要な英語力とは? ロッシェル・カップによる、AIも間違える「交渉英語」文例集も収録。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インドネシア株急落、MSCIが懸念表明 フロンティ

ビジネス

27日のドル/円急落、日銀当預で介入の形跡判別でき

ワールド

致死率高い「ニパウイルス」、インドで2人感染 東南

ビジネス

アドテスト、今期3度目の上方修正 AI向け半導体需
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化はなぜ不可逆なのか
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 5
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    「恐ろしい...」キリバスの孤島で「体が制御不能」に…
  • 9
    「発生確率100%のパンデミック」専門家が「がん」を…
  • 10
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 4
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 8
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 9
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 10
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中