新型コロナウイルスの流行で中国は野生動物を食べなくなるか
The Coronavirus Could Finally Kill the Wild Animal Trade
新型コロナウイルスの感染拡大によって閉鎖されるまで、中国では野生動物の肉を販売する生鮮市場が身近にあった。閉鎖後も、中国政府の管轄外の「金三角経済特区(タイとラオス、ミャンマーの国境地帯にある市場)」などで、象牙やトラの皮、絶滅危惧種の動物が公然と売られている。こうした野生動物を使った料理は高価で男らしさの象徴とも考えられているため、財力を誇示したい人々に好まれる。
野生動物を使った商品は人気が高く、中国政府は長いこと取り締まりに消極的だった。2003年にはSARSが流行し始めて4カ月目に、ジャコウネコとその他53種の野生動物の取引を解禁。だが同年12月に広東省在住の男性がSARSに感染するとこれを撤回し、ジャコウネコ、アナグマ、タヌキ、ネズミなど約1万匹の殺処分を命じた。その後、これらの野生動物の取引は(一時的に)それまでよりも目立たなくなったものの、時が経つにつれて再び公然と行われるようになった。
野生で捕獲した絶滅危惧種の輸入や販売は違法だが、野生動物を飼育して販売することは合法、という抜け穴もある。今回の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、中国政府は2月25日、野生動物を食べる「悪習」の根絶や違法取引の全面禁止を決めたものの、この措置が長続きするかどうかは分からない。
きれいごとは通じない
「新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、今後1~2年は野生動物の取引が減るだろう。感染症のリスクもある」と、感染症予防に取り組むNGO「エコヘルス・アライアンス」のピーター・ダザックは言う。「だがいずれ取引は再開される。野生動物を使った料理の一部は、文化に深く根差している」
自然保護派は、新型コロナウイルスに対する恐怖心が人々の記憶に新しいうちに、希少な野生動物の捕獲や食用消費と、恐ろしい感染症との関係を強烈に印象付けたいと思っている。このチャンスを逃せば、取引禁止の機運はまた失われてしまう。
活動家や学者、政策立案者たちは何十年も前から、野生動物の取引を終わらせるにはどのような理論展開をすべきか考えてきた。動物虐待や生態系の破壊を強調する理屈だと、遠くの知識人たちの共感は得られても、実際に野生動物を買い、食している人々を説得することはできなかった。「自然保護運動は50年前からあるが、市場の閉鎖にはつながらなかった」とダザックは言う。「SARSパンデミック(世界的流行)の時だけが例外だったが、今新たなチャンスが巡ってきた」