最新記事

中国

言論弾圧と忖度は人を殺す──習近平3回目のテレビ姿

2020年2月13日(木)12時30分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

新型コロナウイルス肺炎を世界に拡大させた習近平国家主席 Aly Song-REUTERS

新型肺炎以降、2月10日に習近平はテレビに3回目の姿を現したが、彼をそこに追い込んだのは李文亮医師の死であり「言論弾圧と地方役人の北京への忖度」が新型肺炎パンデミックを起こしたことに対する人民の激しい怒りだ。

説得力を失っている習近平の北京視察の姿

2月10日午後、習近平国家主席が、初めて公けの場に姿を現した。

2月10日13:57のコラム「新型肺炎以来、なぜ李克強が習近平より目立つのか?」では、「習近平は新型コロナウイルス肺炎以来、2回しかテレビに出ていない」と書いたが、コラムを公開した「13:57(北京時間12:57)」の時点では、たしかに習近平はまだ3回目のテレビ露出をしていない。コラムを公開してから、かなり時間が経った後に、「初めて公けの場に姿を現した映像」が公開されたのである。

しかも「その姿」のなんと説得力のないことか。

形ばかりのマスクを付けて白衣などを着ているが、毅然とした勢いもなければ、日々3000人もの患者が増えている国家のトップリーダーの危機感など微塵もない。拳を振り上げているが、力など全くこもっていない。

どんなに演技をして見せたところで、庶民に「にこやかに」手を振ったりなどする姿は逆に、を思い起こさせるだけだ。

事実、2月10日付の中国共産党機関紙「人民日報」が報道した習近平北京視察のすぐ下に、別の内容の記事で「到武漢去!(武漢へ行け!)」という見出しがあったために、人民日報の通信アプリにある「習近平の北京視察」と「武漢へ行け!」を結び付けた画像がネットに拡散し、人民の不満を巧妙な形で表すことにつながってしまった。

コロナを警告して摘発された李文亮の死に人民の怒りが爆発

これまでに何度か書いてきたが、武漢中心医院眼科の李文亮医師が昨年12月30日に「今回の肺炎はSARSに類似したウイルスが原因」と強い伝染性を警告したのに対して、武漢警察は李文亮を「デマを流して社会秩序を乱した」として1月1日に摘発した。二度とこのようなデマは流しませんという誓約書にも署名捺印させられた。その李文亮が2月7日未明にまさに新型コロナウイルス肺炎で亡くなったのを受けて、中国のネットでは怒りが爆発し、多くのネットユーザーが悲しみを表した。と同時に李文亮に対する当局の「言論封殺」を激しく非難した。

人民日報の姉妹版「環球時報」の編集長・胡錫進氏さえ、「武漢政府は李文亮医師に謝罪をすべきで、湖北政府は全国の人民に謝罪すべきだ」と書いている。原文そのものは既に削除されているが、この事実をウェブサイト「観察者」が書いている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

自民がイラン情勢で会議、「調査・研究名目のホルムズ

ワールド

フィリピン、南シナ海全域に対する中国の主権主張を拒

ビジネス

イラン戦争警戒の債券投資家、FOMC前にリスク回避

ビジネス

EBRD、イラン情勢で苦境の加盟国企業向け支援検討
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 3
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 6
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 7
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 8
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 9
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中