森林火災で変わるか、温暖化否定のオーストラリア
Australians Are Ready to Break Out of the Cycle of Climate Change Denial
スカイニュースのこの滑稽なスタイルは、2012年前半のクリストファー・モンクトン(イギリスを拠点とする気候変動懐疑派の活動家)の発言の名残りかもしれない。モンクトンは「オーストラリア版のFOXニュース」をつくろうと提案した人物だ。「街頭でデモ活動をするよりも、ニュースメディアをまるごと手中に収める方がずっと効果的だ」と彼は言った。これが「ビジネス占星術師」を生む土台をつくったのだ。
さらに上をいくのがオーストラリアン紙。タブロイド紙やネットのコメント欄とは縁のない人々が読む「高級紙」だ。同紙は風力発電所の風車が出す低周波の騒音が奇形や体調不良の原因になるという「ウィンド・タービン・シンドローム(風車症候群)」論を展開した。子羊の奇形や黄身のない鶏卵も風車のせいだ主張する記事を載せるなど、長年にわたり気候変動の科学を否定してきた。一連の記事は将来、無数の人々を殺した「エセ科学」として歴史に残るだろう。
<参考記事>トランプの最新エセ科学:風力タービンは「がんの元」
最近の重要な例では、オーストラリアン紙は昨年9月から燃え盛る未曽有の森林火災について、放火で逮捕された人の数を「183人」と誤報した。実際に意図的な放火の罪に問われたのは24人。183人という数には、タバコのポイ捨てや無責任なバーベキューなど「火災に関連した罪」に問われた人が含まれている。だがこの誤った投稿と、同じく森林火災の原因として放火を誇張する右派のメディア「セブンニュース」のツイートが世界中に広まり、森林火災の原因は「温暖化による惨事をねつ造しようとする環境テロリストによる放火」だとする陰謀説が実しやかに流布された。
これらのメディアは、温暖化全般を否定するよりは、風車や森林火災のような個別の問題についてのフェイク情報を広めることに熱心だ。2010年代以降、世論が科学をより受け入れるようになったからだ。
2019年に調査会社「ユーガブ」が世界各国を対象に実施した調査によると、温暖化が人為的なものであること、または温暖化が実際に起きていることを否定した人はオーストラリアで10%だけだった。
世界的にみれば、オーストラリアは温暖化否定論に傾いているほうだ。しかし他の国々に比べて特別多いというわけでもない。アメリカでは15%、ドイツでは7%の人が温暖化や人間の関与を否定している。ノルウェーでもオーストラリアと同率の10%が否定論者だ。