韓国でトゥレット障がい者のユーチューバー、「演技」発覚で大炎上
疑惑の目は他の障がい者ユーチューバーにも
この一連の騒動を受け、本当にトゥレット症候群を患いながら、症状への理解や自らの生活を発信していた他のユーチューバーたちにも、疑いの目が向けられるようになった。
YouTubeチャンネル「チックインヌンコノ(チックのあるコノ)」のコノ氏は、アイムトゥレット氏が謝罪動画をアップした同日6日、自ら病院に出向き診断書をもらって、動画内でそれを公開した。コノ氏によると、アイムトゥレット氏が疑われだした頃から、自分のチャンネルのコメント欄にも次第に症状を疑うコメントが増えだしたため、はっきりとさせたかったという。また、トゥレット症候群を患いながらギター演奏を主にアップしているYouTubeチャンネル「トゥレットハンクスティック」も、同日6日自らの処方箋を動画で公開した。
アイムトゥレット氏の疑惑が浮上してからというもの、「診断書をアップしてからユーチューバーを始めろ。そうでないと本物の障がい者なのか信じられない」といった心無いコメントが、色々な症状を抱えながら動画配信をしているユーチューバーたちのチャンネルに書き込まれるようになった。
アイムトゥレット氏は、注目され再生回数を稼ぎたいがためにトゥレット症候群を大げさに演技したことを認めている。再生回数が増えることで入ってくる広告収入に目がくらみ、本来チャンネル開設にあたってもっていた目的を忘れてしまったことからこの問題が起こってしまったのだろう。
障がい者一人ひとりの人格を否定する「感動ポルノ」
これまで障がい者が映像に登場する際、テレビの特番や「24時間テレビ」に出てくるような、障がい者は不幸な境遇に見舞われた「かわいそう」な存在であり、彼らが障がいを乗り越える姿は常に「感動的」であることが多かった。それが、最近では「障がいは個性のひとつ」という考えが徐々に広まり、障がい者への視線も変わってきている。
2012年、オーストラリアの障がい人権活動家ステラ・ヤング氏が用いた「感動ポルノ(Inspiration porn)」という言葉は、多くの人の考えを改めさせるきっかけとなった。コメディアンでありジャーナリストでもあったヤング氏は、骨形成不全症を患って車いすで生活していた。感動ポルノとは、障がい者に対して、健常者がむやみに「感動した」「励まされた」ということを指す。障がい者は「ハンディキャップという不幸を抱えながら、逆境にめげず清く正しく乗り越えていく」という勝手なイメージの押しつけは、障がい者への侮辱、人格否定になる、という考えだ。
2016年NHKでは、障がい者情報バラエティー番組『バリバラ』が、日本テレビの『24時間テレビ』にぶつける形で、同じ放送日にこの感動ポルノの特集を放送した。これは日ごろから障がい者への感動の押しつけについて、違和感をもっていた多くの視聴者から支持を集め、大きな話題となった。