最新記事

サイエンス

交尾をめぐって噛みつき合う、暴力まみれのサメの日常

Great White Shark With Massive Bite On Head Was Attacked By Even Bigger Shark

2019年10月18日(金)14時10分
カシュミラ・ガンダー

バイミーはおそらく、交尾相手を探しているところを他のオスのホホジロザメに襲われたのだろうと、フィッシャーは言う。または、自分よりも大きなメスと交尾しようとして、噛みつかれたのかもしれない。他のサメがアシカやアザラシなどの餌を食べているところを邪魔して追い払われたという説明もできるが、その可能性は低い。

この傷によって、研究者は北大西洋のどこでホホジロザメが交尾しているか特定することができるという。

「同じ海域で3匹のオスのホホジロザメを発見し、他の2匹からは精子のサンプルを採取できた。バイミーはこの海域では『若造』だったのだろう。サメの交尾がとても暴力的なことは知られている。頭を噛み合うこともめずらしくない。サメの日常的な行動だ」と、フィッシャーは言う。

バイミーの傷は痛々しいが、サメは傷の治癒が早いため、もう痛みは感じていない。

同種同士の「共食い」も

オーサーチは2007年に最初の調査をメキシコのグアダルーペ島で実施して以来、34回の調査を行い174人の研究者が参加してきた。サメ、ウミガメ、イルカなど400の海洋生物を追跡して生態を研究している。

数週間前、オーサーチはこれまでに見つけた中でも最大級の、全長5.2メートルに達するホホジロザメを北大西洋で発見したが、残念ながら研究者が追跡装置を付ける前に逃げられてしまった。

動物専門チャンネル「ナショジオワイルド」の最近のドキュメンタリー『カニバル・シャークス(共食いするサメ)』で紹介されたように、サメはときには噛みつき合うだけでは済まない。他のサメに体を半分に食いちぎられてしまうこともある。

この番組にも登場したフロリダ国際大学生物科学部のマイケル・ヒーサウス教授は、以前の本誌の取材に対して「多くの人が思っている以上に、サメ同士は共食いする。オオメジロザメ、ヒラシュモクザメ、イタチザメといった大型のサメにとって、小型のサメは格好の餌食だ」と語っている。

また同じ種類のサメ同士でも、小型の個体を「共食い」することが知られている。「サメの多くの種類が、大きいサメに食べられなくなる安全な大きさになるまで子育てができる、水深が浅くて守りやすい『保育水域』を持っている」とヒーサウスは話している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

保有国債の評価損が過去最大、9月末13兆6604億

ビジネス

独VW、中国新疆工場売却で合意 上海汽車との提携延

ワールド

ガザ各地に空爆、15人死亡 元ハマス報道官の息子も

ビジネス

アングル:高値更新も暴落に備える米株市場、トランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 4
    放置竹林から建材へ──竹が拓く新しい建築の可能性...…
  • 5
    「健康食材」サーモンがさほど健康的ではない可能性.…
  • 6
    こんなアナーキーな都市は中国にしかないと断言でき…
  • 7
    早送りしても手がピクリとも動かない!? ── 新型ミサ…
  • 8
    トランプ関税より怖い中国の過剰生産問題
  • 9
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中