最新記事

米イラン関係

米軍がイラン旅客機を撃ち落とした1988年の夏

Long Memories in Tehran

2019年8月22日(木)15時50分
トム・オコナー

magw190822_IranAir2.jpg

イラン革命記念集会でトランプ米大統領に見立てた人形を燃やす参加者 MAJID SAEEDI/GETTY IMAGES


同じく5月、オマーン湾でサウジアラビアやノルウェーのタンカーなど商船4隻が何者かからの攻撃を受けて船体を損傷。6月にもノルウェーや日本の企業が運航するタンカー2隻が標的になった。イランは攻撃への関与を否定しているが、20日にはアメリカの無人偵察機を撃墜。トランプは当初報復攻撃を指示したものの、民間人が犠牲になるのを恐れて結局撤回した。

アメリカの圧力は逆効果

この日の夜、トランプお気に入りの保守系ケーブルテレビ局FOXニュースの特集番組で、ジャック・キーン元陸軍大将はイラン航空655便撃墜という約30年前の「恐ろしい過ち」に言及。イラン革命防衛隊の航空部隊を率いるアミール・アリ・ハジザデ司令官も、20日に無人機を撃墜した際、35人を乗せた米軍のP8哨戒機も一緒に飛行しており、これも撃ち落とすことはできたが思いとどまったと発言した。

衝突は回避されたが、「イランにしてみればアメリカの一部の識者と政策立案者の強硬論は悪い冗談に聞こえたはずだ」と、ベサリウス大学(ブリュッセル)で教えるラグナー・バイラント(国際関係論)は指摘する。

「アメリカは1988年にペルシャ湾上空でイラン航空655便を撃墜したことを、まだ正式に謝罪していない。民間のエアバスA300型機を米軍の巡洋艦ビンセンズがイランのF14戦闘機と誤認したせいで、子供66人を含む300人近い乗員乗客が死亡した」と、バイラントは言う。「そのアメリカが今度は、イラン領空に侵入もしくは接近した無人機をイランが撃墜したからといって戦争をするのか。敵対的な国の無人機が自国の領空に接近したら、アメリカはどう反応するだろう」

ロジャーズは1990年にビンセンズ艦長としての功績を理由に受勲したが、「戦争で荒廃したイランでは、何千万もの人々がさらに厳しさを増したアメリカの制裁に苦しんだ」と、バイラントは言う。「トランプが昨年台無しにした合意の一番の受益者はイラン政権ではなく、イランの一般市民だった」

アメリカはイラン革命以降ほぼ一貫してイランの孤立化を図ってきたが、皮肉にもトランプ流の「最大限の圧力」はかえってトランプ政権を対イラン政策でほぼ孤立させる結果となっている。中国とロシアは6月5日の共同声明でアメリカの対イラン制裁に反対を表明。アメリカの盟友であるヨーロッパも、遅まきながら29日にイランとの限定的な貿易を可能にする特別目的事業体をスタートさせた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベセント米財務長官、インドに対する追加関税撤廃の可

ワールド

米、嵐で16万戸超が停電・数千便が欠航 異常な低温

ワールド

市場の投機的、異常な動きには打つべき手を打っていく

ワールド

米ミネアポリスで連邦捜査官が市民射殺 移民取り締ま
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 3
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投稿したアメリカを嘲笑する動画にネット爆笑
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 6
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 9
    サーモンとマグロは要注意...輸入魚に潜む「永遠の化…
  • 10
    「楽園のようだった」移住生活が一転...購入価格より…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 4
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 7
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 8
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 9
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中