ミャンマー民主化の華だったスーチー、今や中国共産党と「一帯一路」で蜜月に
ミャンマーを「一帯一路」計画の主要拠点にしたい中国は、同国の議員らにあの手この手で接近を図ろうとしている。写真は北京を訪問したミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問(左)を出迎える中国の習近平国家主席。4月24日撮影(2019年 Fred Dufour/代表撮影)
ミャンマーの与党・国民民主連盟(NLD)が結成されたのは、独裁政治に抵抗する最中だった。軍事独裁政権下にあって、NLDの活動家たちは獄中で何年も過した。
だが、3年前に政権を獲得して以降、ノーベル平和賞受賞者でもあるアウン・サン・スー・チー国家顧問率いるNLDは、当時からすれば考えられないような相手と手を組んでいる。中国共産党だ。
友好関係はスー・チー氏と中国の指導者ら上層部の交流の中で培われてきたが、党員レベルの中国訪問にも支えられている。その中身は、コンテナターミナルや教育プロジェクトの視察、ぜいたくな夕食、買い物などさまざまだ。
こうした往来は、ミャンマーを習近平国家主席の看板政策「一帯一路」の主要拠点にしようとする中国の取り組みの一環だ。中国は外資の誘致に必死のミャンマーに、大型船が出入りできる深い港や、水力発電用ダム、経済特区の建設などを持ちかけている。
ロイターは、中国に招待されて訪中したNLD党員や国会議員20人以上を取材した。中国政府はこうした取り組みを通じ、ミャンマーが中国に抱いている歴史的な不信感や、巨大な隣国に借りを作ることへの警戒感を取り除きたいと考えている。
NLD機関誌の編集者、Aung Shin氏は「かつてミャンマーと中国の関係は、政府間のやり取りにとどまっていた。(中国が)相手にしていたのはミャンマーの将軍たち。国民は彼らに好感を抱いていなかった」と語る。
中国から招待が相次ぐようになったのは2017年、ミャンマーと西側諸国との関係が冷え込んでからだ。北西部ラカイン州で軍が70万人のイスラム系少数民族ロヒンギャを弾圧、ミャンマーはバングラデシュに逃れた難民のをめぐって厳しい批判を浴びていた。
国連の安全保障理事会でミャンマー軍に厳しい対応を求めた際にも、中国は隣国ミャンマーを擁護した。
かつて政治犯だったAung Shin氏のような忠実なNLD支持者は、中国がミャンマーに示す好意を歓迎している。
「彼らは以前の中国とは違うということを示したがっている。私たちを招待し、国内を見せて回ろうとしている」と、Aung Shin氏は言う。彼は2013年から、少なくとも10回は視察旅行で訪中している。