最新記事

感染症

アメリカ疾病予防管理センター、プールでの寄生虫病の感染に注意を呼びかけ

2019年7月16日(火)19時00分
松岡由希子

プールや水遊び場などが要注意 donkeyru -iStock

<アメリカ疾病予防管理センターは、クリプトスポリジウム属原虫がヒトなどの哺乳類の消化管に寄生し、水様性下痢や腹痛、発熱などを引き起こす感染症に、プールや水遊び場を通じて感染することへの注意を呼びかけた>

夏がいよいよ到来し、老若男女問わず、多くの人々がプールや湖、川などでウォーターレジャーを楽しむ季節となってきた。本格的な夏の到来に先立ち、米国では、2019年6月28日、疾病予防管理センター(CDC)が水系感染症のひとつ「クリプトスポリジウム症」の発生動向に関する調査結果を発表し、クリプトスポリジウム症に感染しないよう、注意を呼びかけている。

水や食物を通じて経口感染することが多い

クリプトスポリジウム症とは、クリプトスポリジウム属原虫がヒトなどの哺乳類の消化管に寄生し、水様性下痢や腹痛、発熱などを引き起こす感染症である。

糞便の中に排出され、これに感染した水や食物を通じて経口感染することが多く、2日から10日の潜伏期を経て発症する。免疫系が正常であれば2週間程度で自然治癒するが、免疫不全状態では重症化し、死に至るケースもある。また、治癒後も2週間から1ヶ月程度は寄生原虫が糞便内に排出されることがあるため、プールなどでの二次感染にも注意が必要だ。

疾病予防管理センターでは、米国50州、コロンビア特別区、海外領土の公衆衛生当局者が「全米アウトブレイク報告システム(NORS)」を通じて2009年から2017年までに任意で報告したデータを集計した。

その結果、クリプトスポリジウム症の集団発生件数は合わせて444件にのぼり、患者7465名のうち、287名が入院加療し、1名が死亡した。クリプトスポリジウム症の集団発生の報告件数は2009年から2017年までに年平均12.8%増加している。

プールや水遊び場などが要注意

クリプトスポリジウム症の集団発生で最も多いのは、プールや水遊び場などのレクリエーション用水によるもので、全体の35.1%にあたる156件が報告され、そのうち100件はプールで発生したものだった。また、月別にみると、クリプトスポリジウム症の集団発生件数は、7月から8月にピークに達している。

疾病予防管理センターでは、クリプトスポリジウム症への感染予防策として、プールや水遊び場などのレクリエーション用水を飲まないように呼びかけるとともに、クリプトスポリジウム症に感染した場合、治癒後2週間はプールや水遊び場の利用を控えるよう求めている。

また、この調査結果によると、クリプトスポリジウム症の集団発生は、家畜との接触や、保育所でのオムツ替え、食中毒などでも起こっている。トイレ使用後やオムツ替えの後、食事前などでの手洗いを徹底し、野菜や果物を生で食べる際には清潔な水で洗うなど、日常生活においても衛生を心がけることが重要だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権

ワールド

米空港で最大20%減便も、続く政府閉鎖に運輸長官が

ワールド

アングル:マムダニ氏、ニューヨーク市民の心をつかん

ワールド

北朝鮮が「さらなる攻撃的行動」警告、米韓安保協議受
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中