最新記事

ドキュメンタリー

「地球は平面」と主張する人々が、丸い地球に出会ったら

Flat Earthers Disprove Themselves With Own Experiments in Netflix Documentary

2019年5月15日(水)21時00分
アンドリュー・ウェーレ

「地球は平面だ」と主張する人々が自説に固執するのには意外な理由があった NEWSWEEK

<地球平面説を唱える運動を追ったネットフリックスのドキュメンタリーは、どんな証拠を突き付けられても自説を曲げない「信者」たちの知られざる心理に迫る>

現在ネットフリックスで配信中のドキュメンタリー映画『ビハインド・ザ・カーブ─地球平面説―』(2018年)には、首を傾げたくなる瞬間がたくさんある。その大半が地球平面説を提唱する人々、とくにユーチューバーのマーク・サージェントの登場場面だ。

この作品で最も驚くべきことは、地球は平らと信じる人々が自らの実験で自説が完全に否定されても、頑として真実を認めようとしないことかもしれない。作品中で紹介される2つの実験は、平面説の信者の期待とは正反対の結果になった。そのひとつである光源を使った実験は、作品の最後を飾るにふさわしい衝撃をもたらす。

ワシントン州ウィドビー島に住むマーク・サージェントは、島の海岸から対岸のシアトルの高層ビルが見えることを指摘、地球が平面である証拠だと主張する。

「科学者は反論するのに必死だ」と、彼は言う。「天体物理学者のニール・ドグラース・タイソン、俺たちにとっては名前を口にするのも嫌な奴だけれど、あいつは俺たちの説を反知性主義で、文明と民主主義の終わりを意味する運動だと抜かした」

ドキュメンタリー映画『ビハインド・ザ・カーブ―地球平面説―』(2018年)では、人々が科学実験で地球平面説を証明しようとするが......('Behind the Curve'、ネットフリックス配信中)


ここでコメディ専門局の人気トーク番組に出演したタイソンの映像が挿入される。「地球は平らじゃない!」と彼は断言する。

「俺たちが有利なのはなぜかというと、科学者たちは数字で攻めてくるからだ。俺たちは、ここからシアトルが見えている、と言えばそれでいい」と、サージェントは言う。

南極は巨大な氷の壁

サージェントやその他の地球平面説の支持者は、地球が巨大なドームで覆われており、太陽と月は我々の頭上を回っていると信じている。南極大陸は大陸ではなく、「地球大陸」の周りを取り囲む巨大な氷の壁だ。ドキュメンタリーの後半では、氷の壁を超えたところにまだ発見されていない大陸があるという説など、もっと幻想的な説も紹介される。

しかし『ビハインド・ザ・カーブ』は、変人オンパレードだけの作品ではない。地球平面説のような独断的で非科学的な理論を広めようとする人々の心理を掘り下げ、実験で自説と異なる結果が出た時にいったい何が起こるのか、その実例を紹介している。

地球平面説を唱えるユーチューブ・チャンネルの人気ホスト、ボブ・クネーゲルが地球の自転を否定するための実験について語る場面は、まさに驚きとしか言いようがない。

彼は地球の自転を否定するために精度の高いレーザー・ジャイロスコープを使って実験を行う。地球が回転しているなら、地面に設置したジャイロスコープは時間とともに傾きを検知する。動いていないなら、何も起こらない......。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノバルティスとロシュ、トランプ政権の薬価引き下げに

ビジネス

中国の鉄鋼輸出許可制、貿易摩擦を抑制へ=政府系業界

ワールド

アングル:米援助削減で揺らぐ命綱、ケニアの子どもの

ワールド

訂正-中国、簡素化した新たなレアアース輸出許可を付
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中