最新記事

フランス

ノートルダム大聖堂、再建への道は遠い

“This Restoration Will Take at Least a Decade”

2019年4月26日(金)13時00分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌記者)

――そもそも、なぜノートルダム大聖堂に関心を持ったのか。研究対象にした理由は?

私は70年代後半にパリに住んでいて、本を執筆しようとしていた。ちょうどそのとき、大聖堂内の清掃作業が始まった。絶好の機会だった。最上部まで届く足場が組まれていたが、中世建築を専門とする建築史家が現場で調査している様子はなかった。普通なら誰も見られない部分をこの目で見ることができるなんて、一生に一度あるかないかというチャンスだった。

その後、ものすごく長くて、おそらく退屈極まる論文を完成させた。建造物がいかに建てられたかという点に、私は関心を持っている。

――なかでも、石でできた壁部分を検証した。

そう。採寸して、あらゆる細部について記録すれば、いくつのもの時代にまたがる物語が見えてくる。

notredame-chart01.jpg

――ノートルダム大聖堂の構造に関する知識を基に、再建の道筋を描いてもらえるか。

損壊の程度や修復の優先度を把握するだけでも何カ月もかかると考えている。ボールトが一部崩壊した箇所では特に、まず木製の枠組みや支柱を立てることが必要になるだろう。

これ以上、石材が崩落しては困る。ダメージを受けた部分を一時的に補強する仕組みを整えてからでないと、本格的な修復作業は始められない。

―― 一般公開の再開には長い時間がかかるのではないか。

残念だが、そのとおりだ。だが今回の火災によって、歴史的建造物は壊れやすいという意識が高まるだろうと期待している。維持管理のための寄付や募金活動が盛んになるはずだ。

ノートルダム大聖堂は、パリを訪れたらとりあえず行っておくべき観光名所というだけではない。フランス史に重要な位置を占める極めて興味深い場所だと、人々が考えるようになるのではないか。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2019年4月30日/5月7日号掲載>

201904300507cover-200.jpg

※4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が尊敬する日本人100人」特集。お笑い芸人からノーベル賞学者まで、誰もが知るスターから知られざる「その道の達人」まで――。文化と言葉の壁を越えて輝く天才・異才・奇才100人を取り上げる特集を、10年ぶりに組みました。渡辺直美、梅原大吾、伊藤比呂美、川島良彰、若宮正子、イチロー、蒼井そら、石上純也、野沢雅子、藤田嗣治......。いま注目すべき100人を選んでいます。

20241203issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年12月3日号(11月26日発売)は「老けない食べ方の科学」特集。脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす最新の食事法。[PLUS]和田秀樹医師に聞く最強の食べ方

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

NZ中銀、政策金利0.5%引き下げ 追加緩和を示唆

ワールド

中国工業部門利益、10月は前年比10%減 需要低迷

ビジネス

米アムジェンの肥満症薬、試験結果が期待に届かず

ビジネス

豪上院委員会、16歳未満のソーシャルメディア禁止法
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 4
    放置竹林から建材へ──竹が拓く新しい建築の可能性...…
  • 5
    「健康食材」サーモンがさほど健康的ではない可能性.…
  • 6
    こんなアナーキーな都市は中国にしかないと断言でき…
  • 7
    早送りしても手がピクリとも動かない!? ── 新型ミサ…
  • 8
    トランプ関税より怖い中国の過剰生産問題
  • 9
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 10
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中