最新記事

動物

巨大なホホジロザメが一匹残らず逃げる相手は

Great White Sharks Are Terrified Of Orca, Study Reveals

2019年4月18日(木)17時00分
ハナ・オズボーン

ホホジロザメは、シャチがサメを捕食することを知っているのか Alessandro De Maddalena/iStock.

<体長5メートル超で向かうところ敵なしの巨大ホホジロザメだがシャチと遭遇すると即座に大切な狩り場まで明け渡して退散することが判明>

通常、食物連鎖の頂点にいる巨大なホホジロザメが、縄張りにシャチが入ってくると逃げることが分かった。

米カリフォルニア州のファラロン湾国立海洋保護区でサメの個体数を調査していた研究チームは、同保護区にシャチが現れるとサメは姿を消し、そのシーズン中戻ってこないことに気づいた。

「これらのホホジロザメは巨大で、中には体長5.5メートルを超えるものもいる。通常は海を支配するサメたちだ」と、モントレーベイ水族館所属の科学者であるスコット・アンダーソンは声明で述べた。「我々は毎年、サウスイースト・ファラロン島でホホジロザメがゾウアザラシを捕食するのを平均40件程度、記録している」とアンダーソンは言う。「だがシャチが現れた後はサメを一匹も見ておらず、捕食例も確認されていない」

研究は、オンライン学術誌のサイエンティフィック・リポーツに発表された。研究チームはホホジロザメとシャチの遭遇例を追跡。2006年から2013年の間に、タグを取りつけたホホジロザメ165匹から得たデータを検証し、さらに同海域におけるアザラシ、ホホジロザメとシャチについて27年分の調査を検証した。

好みの狩り場を捨てて

ホホジロザメは毎年9月から12月にかけてファラロン諸島に集まり、若いゾウアザラシの狩りをする。通常はサウスイースト・ファラロン島で約1カ月を過ごすが、ここがシャチの活動領域と重なっている。シャチもゾウアザラシを捕食するが、シャチがこのポイントに滞在する期間は短く、しかも島にはたまにしかやって来ない。

両者の活動領域が重なった例は少ないが、いずれの場合もホホジロザメは数分以内に去っていった。「シャチに直面すると、ホホジロザメは即座に好みの狩り場を明け渡し、最長で1年は戻って来ない。シャチがこの地点を通過しただけの場合もそうだ」と、モントレーベイ水族館の上級科学研究員で報告書の筆頭著者でもあるサルバドール・ヨルゲンセンは声明で述べた。

島を去ったホホジロザメはゾウアザラシのもう一つのコロニー(生息地)に向かうか、さらに沖合に向かうという。研究チームは、この所見は食物連鎖が複雑なものであることを示していると語る。海の最上位の捕食者同士の関係は滅多に記録されることがなく、理解も進んでいない。

集団でホホジロザメを追い詰め、捕食するシャチ(狩りの模様は2:12~)


ホホジロザメ3頭の死骸が打ち上げられた。「犯人」は背びれが丸まった2頭のシャチか?
(最後に、専門家監修によるサメ狩りのコンピュータシミュレーションあり)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ヘッジファンド、銀行株売り 消費財に買い集まる=ゴ

ワールド

訂正-スペインで猛暑による死者1180人、昨年の1

ワールド

米金利1%以下に引き下げるべき、トランプ氏 ほぼ連

ワールド

トランプ氏、通商交渉に前向き姿勢 「 EU当局者が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中