最新記事

ヘルス

噂のケトダイエット、本当に体にいいの?

Is the Keto Diet Safe?

2019年2月15日(金)17時40分
イブ・ワトリング

ketonm.jpg

ケトーシス状態になったかどうかは血中のケトン体濃度を調べれば分かる。吐く息にツンと鼻をつく特有の臭いがしたり、口が渇くこともサインになる。

この状態になるには、糖質の摂取量を1日50グラムまでに制限しなければならない。厳格な実践者は1日20グラム(バナナ1本分)しか取らない。代わりにオリーブ油やナッツなど高脂質食品をたっぷり食べる。牛肉や鶏肉もたくさん食べていいが、タンパク質は1日の摂取カロリーの20%までに抑える必要がある。

野菜・果物はでんぷんや糖類をたっぷり含んでいるため、糖度の低いベリー類や葉物などを選んで少量取るようにする。

糖質を極端に制限しても工夫次第でグルメな料理を楽しめるが、許可された糖質の摂取量の大半は野菜から取ることになる。

ケトダイエットは低カロリー・低脂質のダイエットと比べて短期間で大きな減量効果があると、いくつもの論文で報告されている。理由として考えられるのは、脂っこいものを食べるので満腹感が長く続くことや、ケトーシス状態になると空腹ホルモンの分泌が抑えられることなどだ。

ただし長く続けるのは難しく、1年もすると低脂質ダイエットと減量効果はほとんど変わらなくなるとも指摘されている。

まずは医師に相談しよう

「どんなダイエットにもリバウンドは付き物」と、栄養学者のアリッサ・ラムジーは言う。「しかも、3人に2人は減量前より体重が増えてしまう」

治療目的で採り入れる場合は別として、一般の人でもケトダイエットは体にいいのだろうか。

この点については研究者の見解が分かれている。指摘されている問題点は、飽和脂肪酸の多量摂取でコレステロール値が上がりかねないことや、果物・野菜の摂取量が減るためビタミンや食物繊維が不足しがちなことなどだ。

ハーバード大学医学大学院のニュースレター「ハーバード・ヘルス・レター」は、ケトダイエットでは大量の脂質とタンパク質を代謝するため肝臓と腎臓に過大な負担がかかる危険性があると警告している。

糖質制限を始めてからケトーシス状態になるには数日かかり、その間に人によっては下痢、吐き気など「ケト風邪」と呼ばれる症状が出る。長期的には便秘や思考の混乱、イライラなどの症状が表れることがある。

糖質制限に限らず何らかの形で食事を制限すれば「食べ物のことを異常に気にし、食欲をコントロールできなくなるなど食習慣が乱れかねない」と、ラムジーは指摘する。

こうしたリスクを理解した上で、ケトダイエットを試してみようと思うなら、まずはかかりつけ医に相談してみよう。

<本誌2019年02月05日号掲載>

※2019年2月5日号(1月29日発売)は「米中激突:テクノナショナリズムの脅威」特集。技術力でアメリカを凌駕する中国にトランプは関税で対抗するが、それは誤りではないか。貿易から軍事へと拡大する米中新冷戦の勝者は――。米中激突の深層を読み解く。

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英予算責任局、来年3月3日に経済・財政予測公表

ビジネス

日経平均は小反落で寄り付く、利益確定売りが上値抑制

ワールド

グリーンランドは「安全保障に必要」、トランプ氏が特

ビジネス

ペルツ氏のトライアンの連合、アクティブ運用ジャナス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中