アメリカとサウジ、記者失踪巡り交錯する利害と思惑
米トランプ大統領はポンペオ国務長官をサウジに派遣、ムハンマド皇太子と会談した。Leah Millis-REUTERS
米国とサウジアラビアは過去70年にわたり、相互に依存する関係にあった。サウジは原油を輸出し、米国は地域の安定を提供。原油価格やイラン包囲網、テロ封じ込め、シリアやイエメン内戦への対策、米国向けの投資からパレスチナ紛争まで、この2国は時に協力し合い、時には対立する関係にあった。
だが、10月2日にサウジ人記者ジャマル・カショギ氏がトルコ・イスタンブールの総領事館で消息を絶ってから、米国とサウジの間で緊張が高まっている。
トルコはカショギ氏が殺されたと主張し、サウジ側は否定しているが、一部報道では尋問中に誤って死亡したとの説明を準備していると伝えられた。
両国間の関係変化による影響やリスクをまとめた。
●原油
サウジアラビアは世界最大の原油輸出国であり、供給量を調整して価格を上下できる能力がある。通常は将来の価格に影響を与えず、現状の原油収入が最大限になるような水準に調整している。サウジにとって原油収入は国家予算や、非石油部門の発展を後押しするための政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」の財源を賄うためにも原油収入は必要だ。
一方で米国も、国内でシェールオイルの生産が拡大するにつれ、輸入原油への依存度が下がっている。
ただ、もしサウジが原油輸出を減らし、原油価格が上昇するような状況になれば、米国の経済成長にとっては重しとなり、2020年の次期大統領選で再選を目指すトランプ大統領にとっては逆風となりそうだ。
また、原油価格が上昇すれば、米国の思惑とは反対に、イランにとって原油収入が増えることになり、米国のイラン対策の足を引っ張ることにもなりそうだ。
●武器輸出
トランプ大統領はカショギ氏失踪を巡り、サウジに強硬姿勢で臨むかで苦慮している。大統領は13日、カショギ氏が総領事館内で殺害されたことが確認されれば、サウジに「厳しい処罰」を科すと述べた。ただ、米国からサウジ向け武器輸出を止めるのは、米国の雇用が失われ、ロシアと中国の企業に恩恵をもたらすだけだとして慎重な姿勢を示した。
一方、共和党のリンゼー・グラム上院議員は、フォックス・ニュースに対し「サウジに制裁を加える」と述べ、さらにフォックス・ニュース・ラジオのインタビューでは「(サウジのムハンマド皇太子が権力の座にある限り)武器輸出を停止する」と述べた。