米関税免除の成功に沸いた韓国鉄鋼界 代償の割り当て枠で苦境、日本と明暗
米国に移転
トランプ大統領は8月29日、鉄鋼とアルミ輸入の割当枠の適用対象から韓国を含む一部の国を除外する文書に署名。米商務省は「米国の鉄鋼・アルミ生産業者から入手できる製品の量や質が不十分な場合、企業は当該製品の適用除外を申請できる」とし、「そういうケースの場合、割当枠の適用が免除される可能性があり、そうなれば関税を支払う必要はない」と説明した。
しかし米国に活動拠点のない輸出企業は、免除を直接申請することはできない。米国の取引先を通じて輸入増を求めることしかできず、プロセスはより複雑で時間を要する。
ある鋼管メーカーの社員はロイターに対し、5つある工場のうち1つを今年後半まで停止すると話す。
「わが社の工場の稼働率は、ほぼ半分まで低下した」と、この社員は匿名で語った。輸入割当枠を回避するため、工場の1つか2つを米国に移転することを検討しているという。
また、世亜製鋼の社員は匿名で「米国に工場が2つあるため、輸入割当枠の影響をそれほどひどく受けてはいない。中長期的には、米国での生産能力を拡大することを検討している」と話した。
インドへの道
公式統計に基づくIHSマークイットとグローバル・トレード・アトラスのデータを使用した米商務省の国際貿易局(ITA)のウェブサイトによると、日本の米国向け鋼管製品の輸出額は今年1─7月、前年同期比で84%増の1億9000万ドル(約210億円)に上った。
一方、韓国の輸出額は8億3100万ドルだが、伸び率はわずか2.6%にすぎない。
世亜製鋼のように、日本の大手鉄鋼メーカーは米国内にも生産拠点があり、輸入関税による打撃を和らげる効果を果たしている。
新日鉄住金の宮本勝弘副社長は、「米国に710万トンの鉄鋼生産能力を持っており、米国への輸出は昨年度60万トン程度なので、規模が全然違う」とし、日本からの輸出減に伴うマイナスに比べ、同社の米国拠点が享受している米鉄鋼市況の上昇による恩恵の方が大きいと指摘した。
だが、鉄鋼全体量としては対米輸出がそれぞれ減少傾向にある中、日韓両国はインドのような成長市場への輸出を増加させている。世界的な貿易摩擦に対する懸念を背景に強含む海外鉄鋼市況の恩恵を得ようとしているためで、新規顧客の開拓にも励んでいる。
相場が上昇したことで、一部の韓国メーカーは輸入割当枠に対する失望感を一段と強めており、関税対象になっていた方がまだよかったと考えている。
「輸出量は制限されている。韓国が輸出を続けられていたなら、価格上昇がその影響を埋め合わせてくれていただろう。たとえ関税がかけられたとしても、その方がましだったかもしれない」と、韓国産業研究院(KIET)のLee Jae-yoon氏は語った。
(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
[ソウル/東京 13日 ロイター]