中国アフリカ協力フォーラムで世界制覇を狙う──後押ししたのはトランプの一言
ジブチは「アフリカの角」と呼ばれるように、スエズ運河の南方で紅海の入り口にあり、角のように飛び出している形をした国だ。国際自由貿易区は総面積48平方キロメートルで、アフリカでは最大だ。落成式の時点では、まだ240万平方メートルしか完成していないが、10年後には完成する計画で工事が着々と進んでいる。
中国にとっては「一帯一路」大経済圏を結ぶ要衝となっており、ジブチには中国の海外軍事基地もある。そこには「五星紅旗」が晴れがましく翻っているではないか。
これでも「新植民地主義ではない」と主張する気だろうか。それには無理があろう。
世界制覇を目指す中国にすり寄る日本
ここまでの危機的状況が目前に迫っているというのに、安倍政権はその中国にすり寄ることに熱心だ。まるで習近平に会えることが「勲章」であるかのごとく位置付けている。
トランプの「くそったれ国家」発言で、アフリカ諸国をしっかりと「我が物」にしてしまった習近平は、それを意識してかアフリカ諸国の首脳らの前で、いやに低姿勢を演出している。全人代の時のような傲慢な表情もすっかり影を潜め、終始穏やかな笑みを浮かべるという演技まで絶やさない。
片や日本。
安倍首相は「ドナルドと100%共にいる」とトランプ側に立ちながら、2016年にアフリカ諸国に300億ドルを拠出するとした。しかしアフリカ諸国が結束して反対しているトランプ側に立ち、中国の半額しか出さないとなると、どんなに日本国民の血税を注いだところで、アフリカ諸国は日本側を向きはしない。アフリカ諸国は漁夫の利を得てホクホクだろうが、長期的視点に立つならば、日本はここで中国にすり寄るのが賢明な戦略なのか否かを考えなければなるまい。
それよりも、本当に「ドナルドと100%共にいる」のならば、ドナルド・トランプに「日米に不利益を招く発言を控えるよう」アドバイスすべきだし、また対中包囲網を形成して何とか中国の一党支配体制と世界制覇を打ち砕こうとしている「ドナルドと100%共にいるべき」ではないのか。
なぜ、中国の世界制覇に手を貸すような矛盾する行動をとるのだろう。
日本には確固たる対中戦略が存在するのか、そして安倍首相は本気で「ドナルドと100%共にいる」気はあるのか、ないのか、なんとも歯痒いのである。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
[1970年1月 1日号掲載]