AI介護、雇用収縮......2030年、AIで日本の職場と家庭はどう変わる?
AIが引き起こす「雇用収縮」
AIが新しい仕事を生み出すことは確かだ。AIに必要なデータを選んで入力するデータサイエンティストはもちろんのこと、ドローン開発者、センサー技術者などの仕事が脚光を浴びてくる。
その一方で、製造現場やコールセンターなど定型で労働集約型の仕事はもちろんのこと、弁護士や司法書士、さらには病院での診断といった知識階級の仕事も奪っていく。
なによりAIを導入する企業は人件費を削減することが大きな目的のひとつとなり、雇用の絶対数が減少することは明らかだ。つまり、AIによる「雇用収縮」が待ち受けている。
この小説に登場する、大手自動車メーカー「トクダ自動車」に勤務する大場美咲は、最年少の製造課長として生産現場のAI化を進め、クビ切りを行い、無人化に成功したやり手だった。
だが、トクダ自動車全体がEV(電気自動車)化や再生可能エネルギーなどの環境対応に遅れて業績不振に陥ると、会社側はあっさりと課長職のAI化に踏み切り、美咲も自らが加担した雇用収縮の渦に飲み込まれた。
彼女は仕事以外にも悩みがあった。美咲の夫は鬱を発症し、彼女の父親はガンを宣告されていたのだ。既にAI診断は当たり前になっていたが、ガンの手術をAI診断は勧めるが、主治医はそれに反対して、美咲は板挟みになる。
一家を支えなくてはいけない美咲は、かつての上司から紹介され急成長するモーター製造会社に工場長として抜擢される。だが、そこで待っていたのは、モノ作りの鉄則を覆すAI時代の新たな戦いだった。
日本を支えてきた自動車メーカーの今後を描きつつ、AIが単独で活躍するのではなく、産業の遷移に同期し、人を巻き込みながら活躍の場を変えていく様子がわかる。
AIで削減される銀行店舗
マイクロソフトのAI「Tay」が、ユーザーが差別的な言葉を大量に入力したために、「ヒットラーは間違っていない」と世界を騒然とさせる結果を表示したのは2016年のことだった。
AIは神ではない。AIは自分でデータを探してくることはできないし、どれが適正なデータかを判断することも無理だ。
そして、入力するデータ次第でAIは間違った結果を出してしまう。このことを肝に銘じておく必要がある。