アニメ大国ニッポンは介護もロボットで 高齢化する世界をリード
普及にはコストと操作習得の壁
2025年に介護人材38万人分の不足をロボットで補おうと、政府も補助金を拡大している。経済産業省では「ロボット介護機器開発・標準化事業」として18年までの3年間に合計47億円の補助金を投入。厚生労働省でも「介護ロボット等導入支援事業」として15年度補正予算で52億円を5000介護施設に支給した。
ただ現実には、それでも全国で1万2000を超す介護保険施設全体に介護ロボットは普及していない。いくつかの課題が解消していないためだ。
第1は費用面のハードルだ。
独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)はアザラシ型ロボット「パロ」の開発に10年以上を費やし、およそ20億円の補助金を投入した。触れると反応し、録音された本物のアザラシの鳴き声をあげ、目が輝いて頭を動かすという、ごく単純な動きだが、その価格は1台40万円だ。
民間企業の製品でも、パナソニックの介護ベッド「リショーネ」は90万円、パワードスーツ「HAL」は月々のレンタル料が10万円に上る。
このため、大方の介護施設では自治体の補助金を利用し、個人で利用する場合は介護保険を利用することになる。
しかし利用台数はまだ僅かだ。「パロ」の場合、世界に5000台が供給され、うち3000台が日本国内で利用されているに過ぎない。
第2に、ロボット導入後も介護職員の負担や労働時間は必ずしも削減されない。
「新とみ」では実際、それほど労働時間が削減されていない。「新とみ」を運営する社会福祉法人「シルヴァーウィング」理事長・石川公也氏は、積極的に介護ロボットを導入している理由について「雇用環境を改善したかった」と語る。腰痛などの職員の負担を回避し、安全性を高める目的を強調、「結果的に職員の安心感につながり、入居者も十分なケアを受けていると感じることがてきる」という考え方だ。
第3は、介護職員にとってロボット操作が負担になるという点だ。人型ロボット「ペッパー」の場合、既に500介護施設に導入され、ゲームや体操、初歩的な会話を行っている。しかし介護職員にとってその操作が難しいと感じるケースがあると指摘するのは、「ペッパー」の開発企業であるソフトバンク・ロボティクスの藤原翔平氏だ。介護は次々とやるべきことが変わるので、職員が操作しなくともペッパーが自らスケジュールに応じて自分でなすべき介護に動いてほしいとの声もあり、「そうした機能を今年中に導入したいと思っている」という。