北朝鮮の姿勢軟化は制裁の成果か、時間稼ぎか
韓国とアメリカはパラリンピックの閉会後に合同演習を実施すると発表しているが、こうなると北朝鮮の姿勢軟化への見返りとして、規模の縮小を余儀なくされるかもしれない。
合同演習の容認というメッセージは「極めて重要」だとラトナーは言う。米韓関係にくさびを打ち込む好機と、金正恩が考えた可能性もある。一方、首脳会談で「非核化」を議題にした場合は、双方の立場の相違が明確になるかもしれない。
マイク・ペンス米副大統領は2月に訪問先の韓国で、北朝鮮が核・弾道ミサイル開発を諦めるまで圧力をかけ続けると述べている。対して北朝鮮は、非核化は外交交渉の前提ではなく、交渉の結果としてもたらされると言いたいらしい。
ペンスは6日の声明でも、北朝鮮が核開発計画を後退させるまで譲歩しないと繰り返した。いわく、「アメリカと同盟国は金体制が核開発計画を終わらせるまで最大の圧力をかけ続ける。あらゆる選択肢が検討の俎上にあり、それは非核化に向けた確実かつ検証可能で具体的な道筋を見届けるまで変わらない」。
核放棄の問題だけが唯一の障害ではない。5日に行われた韓国特使団との夕食会で、金は53年の休戦以来、南北に分断されたままの朝鮮半島の統一という「新しい歴史」についても口にしたとされる。
もちろん、それは韓国とアメリカが長年にわたって追求している民主的な統一ではあるまい。ランド研究所のベネットに言わせれば、「金は韓国主導の統一に言及していない。あくまでも自分が主導する気だ」。
金体制存続の保障があれば核兵器保有の必要はないと北朝鮮は言い、対話への扉を開いたかにみえる。しかし問題は、北朝鮮の考える「保障」の中身だ。彼らはアメリカが敵視政策をやめ、経済制裁を解除し、合同軍事演習をやめ、さらには何十年も前から韓国に駐留している米軍の撤退も要求してくると思われるからだ。
なにしろ北朝鮮は長年にわたり、リビアの例を持ち出してきた。指導者のカダフィ大佐は03年に大量破壊兵器計画を放棄したが、約10年後にアメリカの陰謀で体制を覆された。そう信じているから、自分たちの考える形の統一でなければ体制は保障されないと考えるだろう――ベネットはそう語る。