最新記事

脱北者

また北朝鮮兵士が亡命 軍事境界線に接近した捜索隊に韓国軍が射撃

2017年12月21日(木)13時31分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

韓国軍は、軍事境界線を越えて亡命した兵士を捜索していた北朝鮮軍に対し、約20発の威嚇射撃を行った。写真は板門店で軍事境界線付近を警戒する韓国軍兵士。2015年8月撮影(2017年 ロイター/Kim Hong-Ji)

<北朝鮮軍の兵士が朝鮮半島中西部地域で、軍事境界線を超えて韓国に亡命。2月に平昌五輪を控えた朝鮮半島は一触即発の緊張に包まれている>

韓国合同参謀本部の当局者は21日、「本日午前、中西部戦線の韓国軍前線警戒所で北朝鮮軍の兵士1名が亡命した」と明らかにした。

ニュース1など韓国メディアが伝えるところによると、韓国軍側は午前8時4分に北朝鮮兵士が亡命したことを識別、身柄を安全に確保したという。発見当時は、霧が立ちこめて天候が悪く、視界は100メートルもない状態だった。亡命兵士の身柄確保時は、韓国、北朝鮮の両軍とも銃撃などはなく、安全に韓国側へ誘導できたという。

また軍関係者によると、亡命兵士を捜索する北朝鮮の捜索隊が軍事境界線に接近してきたため、韓国軍側が9時30分に警告放送を数回流すとともに機関銃20発で警告射撃を行ったという。この後、北朝鮮軍側は軍事境界線に接近することはなく、10時13分と16分に北朝鮮側から韓国側への応戦射撃の銃声が聞こえたが、韓国軍側へは着弾しなかった。

今回の警告射撃については、11月に板門店で北朝鮮兵士が亡命した事件が影響しているようだ。当時、亡命した兵士を追って北朝鮮軍が銃撃したのに国連軍側は応戦しなかったことに対して批判があがっていたことから、今回は警告射撃を行ったものとみられる。

亡命した兵士は、19歳くらいの北朝鮮軍の一等兵で、個人用の小銃を携帯していた。亡命の動機や経緯などは今後韓国側の関係機関が調査する予定だという。

北朝鮮軍兵士の亡命は、11月13日に板門店で追撃の銃撃を受けながら脱走した兵士以来となるが、韓国軍当局者によるとこれで今年亡命した北朝鮮軍兵士は4回4名になったという。

また、韓国軍の当局者は、前日の20日夜には北朝鮮の住民が手こぎの木造船に乗って南下し、韓国側に亡命していたことも明らかにした。

それによると、20日午後11時30分に竹島の北方100キロで木造船に乗った北朝鮮住民2名を韓国海軍の哨戒機が発見。海軍の艦船が木造船に近づき、亡命の意思を確認したという。確認したところスパイとはみられず、一般人の亡命ということで、海洋警察が身柄を引き受けた。ただ、亡命目的で船を出したのか、漁業目的で操業中に漂流したのかはまだ不明という。

これで今年北朝鮮から韓国への亡命は軍人、一般人合わせて9回15名になり、2016年の3回5名(兵士1名含む)の実に3倍にのぼる。相次ぐ北朝鮮による軍事挑発への国際的な制裁が強まるなか、北朝鮮国内での金正恩体制への不満が高まり「脱北者」増加につながっているものと思われる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中