最新記事

昆虫食

朝は「コオロギパン」でタンパク質を補給

2017年12月20日(水)16時40分
ジャニサ・デルゾ

ファッツェルのコオロギパン。昆虫は鉄分などの優れた供給源だ Courtesy Fazer

<フィンランドの食品大手がコオロギの粉末で作ったパンを発売開始>

ライ麦や小麦のパンよ、さようなら。これからはコオロギパンの時代。そう、本物のコオロギで作ったパンだ。

フィンランドの食品大手ファッツェルは、世界初と称する昆虫のパンを販売中。原料には、1個当たり約70匹のコオロギを乾燥させてすりつぶした粉末が含まれる。

このコオロギパン、普通の小麦パンより多くのタンパク質が含まれている。食生活にタンパク質が足りない人にはおススメの選択肢かもしれない。

「消費者に良質なタンパク源と、昆虫ベースの食品に慣れる簡単な方法を提供する」製品だと、同社のパン製造部門ファッツェル・ベーカリーのイノベーション担当責任者ユハニ・シバコフはロイター通信に語った。ファッツェルでは、ゆくゆくはフィンランド国内全47店舗でコオロギパンの販売を目指している。

昆虫を食品として販売することを認可したヨーロッパの国としては、フィンランドは後発に位置している。コオロギパンのアイデアは1年以上前からあったが、販売が可能になったのは11月になってからだ。

それまでフィンランドでは、昆虫を食品として販売することは禁止されていた。オーストリア、ベルギー、イギリス、デンマーク、オランダなどでは、既に消費者はこの種の製品を買うことができた。

このところ国連食糧農業機関(FAO)などを筆頭に、昆虫を食生活の一部に取り入れるための研究や啓蒙活動が盛んになっている。13年のFAOの報告書は、人類は既に1900種類を超える昆虫を食品として利用していると指摘した。

「100万種の昆虫種のうち、1900種が人間によって消費されている。最もよく食べられているのは、甲虫、芋虫、ハチ、アリ、バッタ、イナゴ、コオロギなどの仲間だ」

昆虫食推進派は、食品としての昆虫の大きな利点の1つは栄養が豊富なことだと主張する。シバコフはAP通信に対し、昆虫は「脂肪酸、カルシウム、鉄分、ビタミンB12」の優れた供給源だと語った。

一方、環境への好影響という観点から昆虫食を推奨する声もある。例えば、昆虫は豚や牛のような家畜より温室効果ガスの放出が少ない。さらに昆虫は、有機廃棄物を餌にして育てることができる。

昆虫を食べると聞いて、「えっ!」と思う人は単なる食わず嫌いなのかもしれない。問題は、心理的な抵抗感をどうやって解消するかだろう。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

[2017年12月19日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独、「悲惨な」経済状況脱却には構造改革が必要=財務

ビジネス

米マイクロン、米政府から60億ドルの補助金確保へ=

ビジネス

EU、TikTok簡易版のリスク調査 精神衛生への

ビジネス

米オラクル、日本に80億ドル超投資へ AIインフラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 3

    【画像・動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲深くも「勇ましい」空軍のサルマ王女

  • 4

    パリ五輪は、オリンピックの歴史上最悪の悲劇「1972…

  • 5

    人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる…

  • 6

    アメリカ製ドローンはウクライナで役に立たなかった

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 9

    対イラン報復、イスラエルに3つの選択肢──核施設攻撃…

  • 10

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...当局が撮影していた、犬の「尋常ではない」様子

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中