最新記事

北朝鮮情勢

【韓国侵攻】北朝鮮軍は数で米韓軍を圧倒する

2017年11月10日(金)18時30分
ジョン・ホルティワンガー

金正恩を称える北朝鮮軍の兵士たち KCNA/REUTERS

<「北朝鮮の韓国侵攻は、冷戦後で最も差し迫った危機、最大の難題だ」>

米朝戦争が起きれば、米軍は北朝鮮軍に頭数で圧倒され、物資も不足すると、在韓米空軍の第7空軍司令部司令官を務めたジャン・マーク・ジュアス准将は警告する。

「在韓米軍兵士は2万8500人で、北朝鮮軍にはるかに及ばない。前線の圧倒的主力を担う韓国軍も同じだ。北朝鮮軍の兵士は約120万人と推計される。朝鮮戦争以降のどんな戦争とも違い、この戦争では、本格的な戦闘が始まるまでに十分な戦力を動員するのは不可能だ」と、ジュアスは11月7日に米民主党上院議員宛てに送った書簡で言う。本誌はその書簡を入手した。

書簡の宛先は民主党上院議員のテッド・リュー、ルーベン・ガルゴ、タミー・ダックワースの3人。全員が退役軍人で、最近は北朝鮮に対するドナルド・トランプ米大統領の挑発的なレトリックに深刻な懸念を表明していた。

ジュアスは2012年1月~2014年12月にかけて、北朝鮮の韓国侵攻に備えた軍事作戦の立案に深く関与した。「北朝鮮の韓国侵攻は、冷戦後で最も差し迫った危機だ。その危機に備えて作戦を練る任務は、35年間のキャリアの中で最大の難題だった」と彼は言う。

米軍の増援や必要な物資が朝鮮半島に到着するまでに数カ月はかかると、ジュアスはみる。ようやく増援が到着しても、「韓国軍と米軍の基地が通常兵器や化学兵器で攻撃されれば、参戦はさらに遅れる」

核の無力化には地上戦不可欠だが

韓国人と在韓アメリカ人も大惨事に直面する。ソウルを攻撃してくる砲兵部隊やロケット砲、ミサイルを無力化するのに「数日」はかかる。その数日間で「膨大な数の犠牲者と避難民が生まれ、韓国に住む10万人のアメリカ人非戦闘員を含む多くの避難民が、国外脱出のため米軍を頼って押し寄せるだろう」

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が核兵器や化学兵器を使えば、民間人の避難は極めて「複雑な」任務になると、ジュアスは言う。

アメリカが北朝鮮に武力行使すれば、「それがどれほど限定的な攻撃でも」全面戦争に発展し、その時点でも北朝鮮にはまだ「核兵器が残っている可能性が高い」と、ジュアスは強調する。

米国防総省は10月下旬、北朝鮮の核兵器や関連施設を完全に破壊するためには地上侵攻しかない、という見解を示した。リューとガレゴがジェームズ・マティス米国防長官に宛てて送った書簡への回答だ。

ジュアスの書簡で特に「目を見張った」のは、北朝鮮との戦争では米軍の増援や物資の補給が限られるという現実をはっきり示した部分だと、リューは本誌に語った。中東の戦争とは違い、アメリカは「前もって朝鮮半島に米軍部隊や軍事物資を送っておく選択肢がない。そんなことをすれば、逆に北朝鮮に先制攻撃を招いてしまうからだ」とリューは言う。「北朝鮮の砲兵部隊やあらゆる兵器を破壊するには、何日もかかるだろう。その間に、多くの市民が死んでいく」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中