最新記事

韓国

前のめりの韓国、最低賃金アップで文在寅がダウン

2017年8月1日(火)16時38分
前川祐補(本誌記者)

北朝鮮問題でも、南北会談を突如提案

どこか公約の実現を急ぎ過ぎる感のある文の政権運営だが、その姿勢は外交でも見られる。例えば、対北朝鮮問題だ。

文政権は7月17日、北朝鮮に対して南北軍事会談と離散家族再会のための赤十字会談を突如、提案した。

確かに、北朝鮮との対話路線は文の外交政策の一丁目一番地。だが、性急な動きに関係国は困惑を隠しきれないようだ。実際、トランプ米政権は「対話する状況にはない」として、不快感を隠さなかった。日本メディアも、北朝鮮に対する日米韓の足並みを崩しかねない行為だと、懸念を示した。

何より、文がラブコールを送る当の北朝鮮からも冷や水を浴びせられた。金正恩政権は文の提案に何らの反応も示さず「無視」を決めこんだ。

朝鮮労働党の機関紙である労働新聞に至っては、「(韓国政府が北朝鮮を)公然と敵視する中で関係改善をとやかく言うのは話にならない」と、文の提案を酷評。逆に、アメリカなどの同盟国と進める制裁路線から手を引くよう注文を付けた。文にとっては、肝入りの融和政策で早くも失点した形だ。

前のめりになる文だが、今のままでは勢い余って大きく転倒しかねない。その原因は、最低賃金問題にしろ、北朝鮮問題にしろ、周囲の反応を読み切れていないところにある。

「ヘル(地獄)朝鮮」の言葉に代表されるように、韓国経済における格差問題は確かに深刻で、対策が必要だ。一方、緊張が高まり続ける半島情勢においても緩和措置につながる動きが必要だろう。ただ、そうした政策の実現には、すべからく「ステークホルダー」たちとの擦り合わせが不可欠だ。文は理念が先行し過ぎるあまり、現実的なプロセスを避けているきらいがある。

「国民の大統領」を標榜し、市民に寄りそう政権運営を掲げる文だが、今のところはかなり唯我独尊的だ。

【参考記事】文在寅は「反日」「親北」なのか

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中