最新記事

インタビュー

「お金のために働くな」とファンドマネージャーは言った

2017年6月30日(金)16時30分
WORKSIGHT

この枠組みを社会に残す、そのために人生を使うと決めた

とはいえ、まごころの投信というコンセプトが伝わらない立ち上げ当初は苦労の連続でした。「人の金で社会実験するつもりか」と罵声を浴びたこともありましたし、鎌倉投信を始めて4年目には家計が底をついたこともあります。このときは信頼できる人に代打を頼んで外資系金融機関で出稼ぎしようかなとも思いましたが、最終的には他の役員が融通してくれて持ちこたえることができました。

厳しい局面でも僕が鎌倉投信をやめなかったのは、自分が始めたことだからやり通すということももちろんあるんですけど、何よりもこの枠組みを社会に残すと決めているからです。運用責任者を誰が務めるかとか、自分がどこで働くかということには関心がなくて、この枠組みを社会に残すことが命題なんです。だから私は出稼ぎでもいいわけです。残すことが目的で、私がだめなら誰かが引き継いでくれればいい。そのために人生を使うことを決めたということです。

こういう気持ちが芽生えたのは、この事業を興してからですね。「結い 2101」は自分の利益にしがみつかない投信であって、自分もそういう生き方をしたい。だって、きれいじゃないですか。

私は何のためにこれをやっているのか、自分でなければいけないのか、いつも問い続けています。自分はたまたまこれを思いついて、立ち上げたのは確かに自分かもしれないけど、それはたまたま神様が仕立てたのではないかとも思うんです。

wsArai170630-2.jpg

素晴らしい経営者は例外なく謙虚。おごることなく、自分を消していく。

前職でストレスから体を壊したこと、リーマンショックから「投資は科学である」という思想に疑問を抱くようになったこと。そうした経験が「結い 2101」を発想するきっかけにつながっているだけで、僕に才能があったわけではありません。

おごるのが一番怖いんですよ。素晴らしい経営者はみなさん謙虚です。つまり、自分を消すということ。これがなかなかできないんだけど、なるべく自分を消していこうと決めたんです。そして、いい会社を選んで投資をして応援する、この枠組みを作ることに徹するんです。

枠組みさえ残れば私に何かあっても誰かが引き継げます。それに、いい会社は最終的に社会が決めるものだし、人はそれを残したくなる。だから枠組みを残せば絶対に存続できるんですよね。投資先が間違っていたら変えればいいんです。枠組み自体に問題があるわけじゃない。100年続くものを作るためには枠組みを残すことしかないと思っています。

そういう意味で、今私が力を入れているのは教育です。自分の後継者をつくることにもなるし、いい会社をふやすことにもつながるからです。

2016年3月まで横浜国立大学で社会的起業論の講義を受け持って、社会起業家の育成に取り組みました。それは投資先をつくるためでもあるし、社会的企業でもある鎌倉投信の社員にいずれなってくれるかもしれない人を育てるためでもあります。一人ひとりの力で社会をよくしていこうという考えは青臭いかもしれません。でも、そういう価値観を若者の中に醸成していかなければいけないと思っています。

【参考記事】実績32億円以上、行政の資金調達も担うクラウドファンディングReadyfor

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

エネ市場の緊張が金融安定に及ぼす影響を懸念=イタリ

ワールド

ゴールドマンとシティ、パリの従業員を在宅勤務 爆破

ワールド

英企業、エネ価格急騰で値上げ加速へ 雇用削減見込む

ビジネス

テスラの中国製EV販売、2四半期連続増 3月単月も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 3
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経済政策と石油危機が奏でる「最悪なハーモニー」
  • 4
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 5
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 6
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 7
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 8
    カンヌ映画祭最高賞『シンプル・アクシデント』独占…
  • 9
    「え、なんで?」フライト中に操縦席の窓が覆われて…
  • 10
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中