最新記事

インタビュー

「お金のために働くな」とファンドマネージャーは言った

[新井和宏]鎌倉投信株式会社 取締役 資産運用部長

2017年6月30日(金)16時30分
WORKSIGHT

Photo: WORKSIGHT

<「日本人は極度のお金依存症になっている」と、鎌倉投信の新井和宏氏は語る。「まごころの投資」を掲げる同社の資産運用部長は、いい会社、いい経営者、そして幸せとお金の関係をどう考えているのか>

※インタビュー前編:「投資は科学」とは対極の投資哲学を掲げる資産運用会社

「お金のために働いてはいけない」――これは私が高校で講演する際によくいう言葉です。日本人は極度のお金依存症になっていると思います。「お金がないからできない」とか「お金のせいで自分はこんな仕事をしている」とか、現状を変えられないことの言い訳としてお金を引き合いに出すわけです。

お金はいいものでも悪いものでもありません。手段としては必要だけれども、人間は幸せになるために生きるのであって、お金を貯めるために生きるのではないはずです。

不安を解消するには互いをフォローしあうコミュニティを作ること

ちょっと考えてみてください。幸せになるためにお金はどのくらいのウエイトを占めますか? 先日イベントで聞いてみたら、多くの人の答えは50~100パーセントの間でした。

では次に、自分が幸せを感じるのはどんな時かを考えてみてください。多くの人はお金で買えるものではないことを挙げるのではないでしょうか。セミナーや講演などで聞くと、「遊びや趣味を楽しむ時間」「十分な睡眠」「家族との団欒」などと答える人が多いんです。幸せになるのに実はお金はそれほどいらないにもかかわらず、お金が必要だという思い込みに縛られているということです。

「そうはいっても、老後が心配だからお金を貯めなきゃ」という意見もあるでしょう。でも自分が何歳まで生きるか分かりませんよね。日本人の平均寿命が80歳だからということで、そこまで生きるにはこのくらいのお金が必要だと計算しても、自分が平均年齢で死ぬなんて誰も保証しない。ひょっとしたら100歳まで生きるかもしれません。つまりお金を貯めることでは不安はいつまで経っても解消されないということです。

不安を解消する一番いい方法は、お金がなくても面倒を見てもらう人ができること。つまりコミュニティとそれを維持する仕組みをつくるということです。コミュニティをつくるという意味でお金の不安を解消する仕組みの1つが「結い 2101」であると考えています。

コストを超えた価値を提供できるようになってきた

宣伝や広告は自社のホームページのみで、積極的におこなってはいません。それでも「まごころ」を重視するこの投信が軌道に乗ってきた、共感の輪が広がってきたということは、こういう枠組みを投資家が求めていたということだと思います。

『投信ブロガーが選ぶ! ファンドオブザイヤー』に選んでいただくなど、投資家のみなさんが評価してくださったことが最大の後押しになりました*。以前、投信ブロガーの間では日本の投資信託はアメリカに比べてコストが高すぎる、より安価なインデックス運用の方がいいといった具合に、コストをめぐる論議が活発に交わされていました。

ところが「結い 2101」に投票してくれた投信ブロガーの中には、「こんな投信があってもいいじゃないか」という意見を寄せてくださる方もいました。コストを超えた価値を私たちが提供できるようになってきたということだろうし、そこをちゃんと見てくれている人たちが広めてくれた。その力は大きいと思っています。

【参考記事】「エゴを持たない」食材宅配サービスのスタートアップ

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国、海外機関投資家の市場アクセス緩和へ 証監会が

ワールド

独外相の訪中延期が波紋、関係悪化観測を両国が「火消

ワールド

イエメンで国連職員拘束、フーシ派が事務所襲撃 過去

ビジネス

米地銀で新たな再編、ハンティントンがケイデンスを7
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下になっていた...「脳が壊れた」説に専門家の見解は?
  • 4
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 5
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 6
    中国のレアアース輸出規制の発動控え、大慌てになっ…
  • 7
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 8
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中