最新記事

トルコ

トルコで警官9000人が停職処分 : クーデター未遂後の言論状況をジャーナリストたちが語る

2017年4月28日(金)19時50分
小林恭子(在英ジャーナリスト)

政府の政策を批判するジャーナリストは投獄される。ギュルセル氏が投獄されているのは政府を批判したからだと思う。

「宙ぶらりん」というのは、何が犯罪で何が犯罪ではないのかが分からなくなっているからだ。ソーシャルメディアで批判的発言をしたり、風刺画をシェアすれば「犯罪」なのか。このようなパネルで発言をすることがそうなるのか。トルコにいて、海外メディアの特派員として働いたら罪になるのだろうか。特派員はしばしば、オンラインハラスメントにあっている。

最悪は自己検閲

トルコのジャーナリストは5つの分類のいずれかにいると思う。

1つ目は投獄されている。2つ目は職を失っている。真夜中に緊急法令が出され、朝起きると自分が働いていた職場が閉鎖されていたことを知る。3つ目は自己検閲だ。これが最も悪いかもしれない。内部化され、取り除くのは不可能だ。自分の1部になっているからだ。

4つ目は海外メディアで働くこと。「裏切者」などオンラインハラスメントにあう。5つ目は独立メディアで働くこと。訴追されたり、当局の捜査対象になったりする。

投獄中のジャーナリストたちはハガキを受け取ることさえできない。そこで私たちは連帯を示すために抗議のポスターを作り、複数の新聞に掲載してもらった。

教訓は何か?まず、1つ目はこんな状況が普通のことにはしないことだ。何がだめで何がいいのか、憲法を基に明確にすること。2つ目は読者・視聴者に対し、ジャーナリストは公のために存在していることを知ってもらうこと。ジャーナリストが攻撃されるということは、市民の権利が攻撃されていることを意味する。情報にアクセスする権利だ。ジャーナリズムはエリートのためにあるのではなく、あなたのために存在している。

私が後悔するのは、何年も前にジャーナリズムの意義を市民に十分に納得してもらうことができていなかったことだ。

釈放後、再逮捕も

beidar170428.jpg
トルコ人ジャーナリストのベイダー氏 IJF

ヤブズ・ベイダー氏:トルコでは、メディアと司法が攻撃の対象になっている。現状は「法の支配」がない状態だ。例えばこんな風に事が進む。

ある日、25人のジャーナリストが逮捕・勾留された。公判が終了し、投獄されていた15人が釈放される見込みとなった。家族が刑務所の前に集まり、出てくるのを待っている。しかし、刑務所の門は開かなかった。15人全員が新たな容疑で再逮捕されたからだ。例え刑務所から釈放されても、警察が拘留する。トルコには非常事態宣言が敷かれているからだ。

IPIなどの調査によると、投獄されているジャーナリストは150人を超える。世界中で投獄されているジャーナリストの62%に当たるという。

トルコにはテレビ局が240あるが、政府を批判的な報道をできるのは1-2局しかない。新聞も粛清されている。90%のトルコのメディアは直接的あるいは間接的に政府の影響下にある。

こんな中で、外国人ジャーナリストはどのように取材を行っているのか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏関係者、ロシア企業とアラスカガス開発で合

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、2月速報51.9に上昇 製造業

ビジネス

アングロ・アメリカン、昨年の赤字37億ドル デビア

ビジネス

英総合PMI、2月速報53.9に上昇 雇用は大幅減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由...「落葉帰根」派も「落地生根」派も
  • 3
    中道「大敗北」、最大の原因は「高市ブーム」ではなかった...繰り返される、米民主党と同じ過ち
  • 4
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 5
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 6
    ディープフェイクを超えた「AI汚染」の脅威──中国発…
  • 7
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 8
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 9
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 10
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 3
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 8
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中