最新記事

インタビュー

アメリカ人に人気の味は「だし」 NYミシュラン和食屋の舞台裏

2017年3月31日(金)11時10分
小暮聡子(ニューヨーク支局)

饗屋の料理長を務める園力(その・ちから) Satoko Kogure-Newsweek Japan

<日本料理店が乱立するニューヨークのマンハッタンで異彩を放つ人気店「饗屋(Kyoya)」の料理長が明かす、意外な現地事情と和食の極意>

和食ブームに沸くニューヨークにあって、舌の肥えたニューヨーカーたちを虜にしている和食屋がある。イーストビレッジに2007年3月28日にオープンし、3月で10周年を迎えた「饗屋(Kyoya)」だ。

不動産価格の高騰や競争率の高さから数年で閉店する店も珍しくないマンハッタンで、オープン翌年に発表のミシュラン09年版で1つ星を獲得して以来、客を魅了し続けている。食通の日本人も足しげく通う人気店の舞台裏について、小暮聡子(ニューヨーク支局)が料理長の園力(その・ちから)に話を聞いた。

――客層はアメリカ人と日本人、どちらが多いのか。

日にもよるが、平均すると7対3でアメリカ人の方が多い。オープンした直後は100%日本人だった。

以前から店の宣伝はしていないのだが、開店して間もない頃にニューヨークの日本語フリーペーパーのライターさんが食べに来てくれて、辛口で有名なその方が良い記事を書いてくれた。そのフリーペーパーは日系の商社などにも配られるものだったらしく、掲載後に急に電話が鳴るようになった。2カ月後には、店の外にリムジンが10台くらい並んだこともあった。

記事がきっかけで、初めは日本人の駐在員さんやその奥様たちが来てくれるようになった。こうした方々が接待やビジネスディナーとしてアメリカ人のお客さんを連れて来てくれるようになり、一度来たアメリカ人たちも気に入ってくれて、一気に広がった。

【参考記事】NY著名フレンチシェフが休業、日本に和食を学びに来る!

――日本とは入手できる食材が違うなか、工夫している点は?

基本的には変えていない。正直言うと「あれがあればいいな」というものはあるが、手に入らないものを欲しいと言っても仕方がないので、ならばこっちで歩いて聞いて見て食べて、というのが自分の基本姿勢だ。

魚の仕入れは日系の魚屋さんとアメリカの魚屋さんをそれぞれ3軒ずつ使っていて、そこに注文すると信頼する日本人がブロンクス(ニューヨーク北部)のフィッシュマーケットに買いに行ってくれる。そのほかにも世界中から仕入れていて、オーストラリアや地中海、北欧からも来る。日本からは火曜から金曜まで毎日届く。

アメリカ国内でも各地から調達している。刺身の魚だと、例えばマグロは5月から10月まではボストンの本マグロを使っている。

個人的には太平洋マグロよりも大西洋マグロのほうが好きだ。大西洋マグロのほうがさっぱりしているが味が濃くて、得に赤身のうまみが良い。脂が乗っているトロでさえさっぱりしていて、普通だと2枚くらいしか食べられないところを4枚と食べられてしまうのが大西洋マグロの特徴だ。鉄分や酸味のバランスも良い。

ny170331-0.jpg

盛り付けの美しさにも職人技が光る「刺身の盛り合わせ」 Satoko Kogure-Newsweek Japan

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中