最新記事

イギリス

訪米したメイ首相にも二つの顔――中国CCTVで春節の挨拶

2017年1月30日(月)06時42分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 たしかに香港返還は1997年に成されているので、その意味での記念すべき年ではあろう。しかしビデオメッセージの最後にある、新春を祝う言葉「新年快楽」(Xin-nian Kuai-le)を中国語で言うあたり、なんとも中国におもねている印象を与えた。ヨーロッパ諸国で国を代表して春節の祝賀メッセージをCCTVに送ったのはイギリスのみである。

世界の要人に春節祝賀メッセージを送らせた中国の戦略

 メイ首相以外に、春節の祝賀メッセージを(中国側からの要望に応じて)CCTVに送ったのは以下の面々である。ほぼ全員が、中国語で「新年快楽」あるいは「春節快楽」などと言わせられ、習近平を喜ばせている。

 そのうち、国際組織の代表によるいくつかの祝賀メッセージはCCTVの動画で観ることができる(やや不安定)。日本の正月ではあり得ない現象だ。

●グテーレス国連事務総長(ポルトガル人)( 2017年1月1日就任)

 実は昨年10月13日付の本コラム「李克強マカオ訪問に潜む中国の戦略」で書きたかったのだが、文章が長くなり過ぎて、そこまで踏み込めなかったが、中国は常に国連事務総長を懐柔する戦略に出ている。ポルトガル元首相だったグテーレス氏が昨年10月13日に国連事務総長に任命されたことを受けて、習近平国家主席と李克強首相は、それぞれ祝電を打っているが、10月10日から12日にマカオで「中国・ポルトガル語圏諸国経済貿易協力 フォーラム」を開催し、李克強首相が出席。かつその前日の10月9日にポルトガルのコスタ首相が訪中するという「ポルトガルづくし」の日々があった。

 潘基文・元事務総長同様、中国はグテーレス事務総長懐柔に力を注いでいたのである。

 その証拠が、春節におけるビデオメッセージと中国共産党機関紙「人民日報」電子版におけるグテーレス国連事務総長の春節に対する祝賀のメッセージである。

●ユネスコのボコバ事務局長(習近平夫人・彭麗媛と仲良し。「南京大虐殺」の世界記憶遺産登録に協力)

●エスピノサ・国連気候変動枠組条約事務局長

●陳馮富珍・WHO事務局長(香港特別行政区)(習近平国家主席は今年1月17日のダボス会議の帰路、彼女に会った)

●ラガルド・IMF(国際通貨基金)専務理事

●バッハ・IOC会長(習近平国家主席は今年1月17日のダボス会議の帰路、バッハ会長に会った)

●シュワブ・世界経済フォーラム(年次総会ダボス会議)会長(習近平国家主席は今年1月17日のダボス会議でシュワブ会長と同じ舞台に上がり基調演説をした)。詳細は1月18日付けコラム< >習近平、ダボス会議で主役 ――「鬼」のいぬ間に>。

●オーストラリアのターンブル首相(習近平国家主席がダボス会議で基調演説をしていたとき、安倍首相は東南アジアやオーストラリアを歴訪し、TPPにつなげようとしたようだが、ターンブル首相もまた、メイ首相同様、中国にもニコニコ顔。日本はそのことを認識していないといけない。)

●プレカ・マルタ共和国大統領

●イワニッチ・ボスニアヘルツェゴビナ大統領評議会議長

●「その他」と、くくっては悪いが、その他、ギニア、スリランカなどがある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

東京海上、クマ侵入による施設の損失・対策費用補償の

ワールド

新興国中銀が金購入拡大、G7による凍結資産活用の動

ワールド

米政権、「第三世界諸国」からの移民を恒久的に停止へ

ワールド

中国万科をS&Pが格下げ、元建て社債は過去最安値に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中