まるで鎖国、トランプ移民政策のすべて──専門職やグリーンカードも制限、アメリカの人口も減る!
家族関係に基づくグリーンカードのうち61%が、別のビザを使ってでもアメリカに滞在していなかった移民に渡った。今後の方針にもよるが、トランプの政策下でグリーンカードの発行は毎年14~54万人分に縮小されそうだ。
7)H-1B(専門職就労ビザ)の基準賃金を上げる
これにより、法律知識や専門技術を持つ移民労働者の数を減らす方針だ。14年は12万4000人がH-1Bビザの発給を受けてアメリカで新たに雇用され、うち8万5000人は民間企業、残りは非営利の研究機関でそれぞれ専門職に就いた。
彼らの平均年収は7万5000ドルだから、そもそもアメリカ人の非熟練労働者の競合相手ではない。もしH-B1ビザの発給要件となる最低年収が10万ドルに跳ね上がれば、民間企業での雇用機会は縮小し、研究機関も雇用を減らすだろう。
H-1Bビザの制度は雇用に基づくグリーンカードの主たる対象でもあるため、市民権取得者の構成にも変化をもたらすだろう。
8)アメリカ人労働者を優先して雇用するよう義務付ける
この政策によって、特殊技能を持つ専門職の外国人労働者を雇うアメリカ企業の負担は増大する。1990年に議会がH-1Bビザを対象に導入を検討したが、規制にかかる費用が莫大になるという理由で却下された。もしトランプが自身の言葉通り、政府による規制に反対の立場を貫くなら、この案は拒否することになるはずだ。
人道的な難民受け入れ3割に
9)すでにアメリカで暮らす子どもや若者を対象にした難民制度を創設し、不法移民を国外へ追放する
この政策では制度の悪用や詐欺を削減するという名目で、海外からの難民や亡命申請者に対する認定基準が引き上げられるだろう。
トランプの移民政策は、人道的な理由による移民の数を70%削減すると主張する。仮に今年実行されていれば、アメリカで暮らす難民は約6万人まで削減されていた計算だ。
米シンクタンクのアメリカン・アクション・フォーラムの試算では、不法滞在者を残らず国外退去させて将来も移民の流れを食い止める措置を取るには、今後20年間で4190~6190億ドルもの税金を投入しなければならない。試算には、政策がもたらす経済的なマイナス影響や、移民が退去して経済規模が縮小することによる税収の損失は含まれていない。
同じく米シンクタンクの超党派政策センターは、国内人口が減ることにより、今後20年間で財政赤字が8000億円増大すると試算している。それには経済的な損失や、不法滞在者の排除にかかる米政府の財政負担を含んでいない。
This article first appeared on the Cato Institute site.