最新記事

移民政策

まるで鎖国、トランプ移民政策のすべて──専門職やグリーンカードも制限、アメリカの人口も減る!

2016年11月10日(木)18時30分
アレックス・ナウレステ(米ケイトー研究所、移民政策アナリスト)

 家族関係に基づくグリーンカードのうち61%が、別のビザを使ってでもアメリカに滞在していなかった移民に渡った。今後の方針にもよるが、トランプの政策下でグリーンカードの発行は毎年14~54万人分に縮小されそうだ。

7)H-1B(専門職就労ビザ)の基準賃金を上げる

 これにより、法律知識や専門技術を持つ移民労働者の数を減らす方針だ。14年は12万4000人がH-1Bビザの発給を受けてアメリカで新たに雇用され、うち8万5000人は民間企業、残りは非営利の研究機関でそれぞれ専門職に就いた。

 彼らの平均年収は7万5000ドルだから、そもそもアメリカ人の非熟練労働者の競合相手ではない。もしH-B1ビザの発給要件となる最低年収が10万ドルに跳ね上がれば、民間企業での雇用機会は縮小し、研究機関も雇用を減らすだろう。

 H-1Bビザの制度は雇用に基づくグリーンカードの主たる対象でもあるため、市民権取得者の構成にも変化をもたらすだろう。

8)アメリカ人労働者を優先して雇用するよう義務付ける

 この政策によって、特殊技能を持つ専門職の外国人労働者を雇うアメリカ企業の負担は増大する。1990年に議会がH-1Bビザを対象に導入を検討したが、規制にかかる費用が莫大になるという理由で却下された。もしトランプが自身の言葉通り、政府による規制に反対の立場を貫くなら、この案は拒否することになるはずだ。

人道的な難民受け入れ3割に

9)すでにアメリカで暮らす子どもや若者を対象にした難民制度を創設し、不法移民を国外へ追放する

 この政策では制度の悪用や詐欺を削減するという名目で、海外からの難民や亡命申請者に対する認定基準が引き上げられるだろう。

 トランプの移民政策は、人道的な理由による移民の数を70%削減すると主張する。仮に今年実行されていれば、アメリカで暮らす難民は約6万人まで削減されていた計算だ。

 米シンクタンクのアメリカン・アクション・フォーラムの試算では、不法滞在者を残らず国外退去させて将来も移民の流れを食い止める措置を取るには、今後20年間で4190~6190億ドルもの税金を投入しなければならない。試算には、政策がもたらす経済的なマイナス影響や、移民が退去して経済規模が縮小することによる税収の損失は含まれていない。

 同じく米シンクタンクの超党派政策センターは、国内人口が減ることにより、今後20年間で財政赤字が8000億円増大すると試算している。それには経済的な損失や、不法滞在者の排除にかかる米政府の財政負担を含んでいない。

This article first appeared on the Cato Institute site.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドネシア3月インフレ率、目標圏内に低下 イラン

ビジネス

アイリスオーヤマ、ライフドリンクC株を連日買い増し

ビジネス

中東情勢、5月までに終結なら影響限定 年末株価6万

ビジネス

アドテスト、ユーロ円建てCB1000億円 半導体検
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 4
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 5
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 6
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 7
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 8
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 9
    「え、なんで?」フライト中に操縦席の窓が覆われて…
  • 10
    韓国・週4.5日労働制が問いかけるもの ──「月曜病」解…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中