最新記事

外交

中国、安倍首相のアフリカ訪問を警戒――日本を常任理事国入りさせてはならない!

2016年8月29日(月)18時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 だから1960年代の大飢饉によって自国では数千万の餓死者を出しながら、一方ではギニア(西アフリカ西端。宗主国:フランス)には1万トンの米を、アルバニア(社会主義国家)には1.5万トンの小麦を支援していたのである。

 1960年代半ばから1970年代の文化大革命時代に至ってもなお、中国人民の平均年収が575人民元という生活の中、タンザン鉄道(中国+タンザニア+ザンビア)を建設するために20億人民元を支出し、5万人の中国人労働者を派遣していた(中国側記録)。

 毛沢東は自国の人民の命など何とも思っておらず、自分が建国した中華人民共和国が国連で認められることを優先した。そうでなければ建国の父としてのメンツが立たない。

 毛沢東の戦略は成功し、中国はアルバニアの提案やアフリカを中心とした、いわゆる「第三世界」の国々の賛同を得て(23カ国によるアルバニア決議案)、1971年に国連加盟を果たすのである。そして、それまでの「中国」の代表であった「中華民国」を国連脱退に追い込んだのである。この瞬間から国際社会は一変していった。

 近年になっても、「中国アフリカ協力フォーラム」を2000年に中国主導で立ち上げ、昨年12月には習近平国家主席がアフリカを訪問して「中国アフリカ協力フォーラム」首脳会談に出席するなど、いっそう積極的な姿勢を見せている。

中国、「日本は国連安保理常任理事国入りを狙っている」と非難

 このような歴史があるので、中国としては今般の安倍首相によるアフリカ開発会議への現地における参加と「活躍」が「不快」でならない。アフリカは中国の陣地だと思っているのである。

 そのため、日本が「国連安保理常任理事国入りを狙っている」として非常に警戒し、それを前面に打ち出すことによって安倍首相のアフリカ訪問を激しく非難している。

 たとえば外交学院国際関係研究所の周永生教授や日本問題研究家の楊伯江氏などに評論をさせて、以下のような論理を拡散させている。

1. アフリカには50カ国以上の国連加盟国があり、ここは「大票田」だ。アフリカを押さえておけば国連決議の際に非常に有利に働く。日本は国連安保理常任理事国に加盟したくてならず、その夢を捨てきれずにいる。

2. 日本の外交には一つの規則があり、「中国の行くところを追いかけていく」という不文律がある。しかし中国が建国以来培ってきたアフリカとの深い関わりを、新参者が越えることはできない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

武田薬品の皮膚疾患薬、後期試験で良好な結果 開発に

ビジネス

ワーナー主要株主、パラマウントが修正案提示なら「非

ビジネス

欧州、長期的にはEVが主流に EUの移行計画後退で

ビジネス

競争力維持へコスト削減継続=独VW・CEO
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中