次期英首相レースの本命メイは、21世紀版の「鉄の女」?
内相としての仕事で最もよく知られているのは、武装組織との関わりが指摘されたヨルダン人のイスラム過激派聖職者アブ・カタダを強制送還したことだ。ヨルダンでは公正な裁判が受けられない恐れがあるとして、送還に反対する声も強かったが、最終的に誰もが納得する解決策を見いだした。取り調べで拷問を行わないことをヨルダン当局に約束させた上で送還したのだ。
メイは出馬表明スピーチで、この問題で陣頭指揮を執ったことを強調した。「私は自らヨルダンに飛んで交渉して......話をまとめた」
首相の座を目指す上で最大の懸念材料は、国民投票で離脱派だったゴーブと異なり、残留派だったことだ。それでも、論争に深入りしなかったことが功を奏するかもしれない。「保守党内の離脱派の反感を買わずに済んでいる」と、デイリー・テレグラフ紙は書いている。
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「一般党員は、煮え切らない態度で残留を支持した女性より、離脱を訴えて戦った男性を好むかもしれないが」と、ジャーナリストのキャシー・ニューマンは同紙への寄稿で指摘した。「メイは今後、自分ならイギリスを1つにまとめられるとアピールを強めていくだろう」
ニューマンは、メイをドイツのメルケル首相になぞらえる。確かにこの2人の女性には、聖職者の娘で、中道右派の実務型政治家という共通点がある。
イギリス保守党党首として首相を務めた女性政治家では、マーガレット・サッチャーという先輩もいる。メイは自分をサッチャーの後継者と位置付けることは避けてきたが、今後はこの「鉄の女」を連想させる戦略に転じるかもしれない。
© 2016, Slate
[2016年7月12日号掲載]