最新記事

ラオス

何もなかった建設予定地、中国-ラオス鉄道が描く不透明な未来

2016年5月16日(月)16時41分
舛友雄大(シンガポール国立大学アジア・グローバリゼーション研究所研究員)

 東南アジアでは鉄道計画が相次いでおり、中国側としては、雲南からビエンチャン~バンコク~クアラルンプール、そしてシンガポールに至る鉄道建設を狙っている。インドネシアの首都ジャカルタと同じジャワ島のバンドンを結ぶ高速鉄道について、先日、中国が日本を退けて受注したのは記憶に新しい。また、クアラルンプール~シンガポール区間についても、早ければ2017年に入札が実施される予定で、こちらも中国が日本に対して優勢な情勢だ。

 ラオスにとって、中国は最大の投資国であり、1989年から2014年まででその累計額は約54億ドルに上る。実際に、現在ビエンチャンで建設中のビルの大半には中国資本が入っている。今回の鉄道建設はラオス国内で史上最大のインフラ案件だ。総工費は約60億ドル――実に、この国のGDPの半分にあたる――で、そのうちの約42億ドルを中国が負担することになった。

 東南アジアで唯一の内陸国であるラオスは、周辺国との連結を通して経済発展を実現しようと切望してきた。ラオス投資計画部のある役人は、ラオス政府の負担が差し当たって10億ドルに満たないと聞き(中国のほか、ラオスの国有企業も別途負担するため)、懐疑的な見方を改めたと言う。鉱物を輸出するのに役立つほか、ラオス国内の農業への投資を促進することになると見込む。

masutomo160516-c.jpg

首都ビエンチャンのパトゥーサイ(撮影:筆者)

 だが、ラオスでの鉄道計画は順調に進むのだろうか。2月にラオス政府関係者は、中国-ラオス鉄道の建設はまだ始まっていないと筆者に証言した。ラオスとしては、隣国タイが中国と交渉中のバンコク~ノンカイ区間の鉄道計画の建設を待っている段階だという。バンコクと接続されなければ、昆明~ビエンチャン区間の建設の意義が格段に低くなるからだ。この計画に通じている中国の鉄道関係者は2月時点で、「機械を持ち込み、春節後すぐには施工を始めたい」と言っていたのだが。

 計画の推進者にとっては頭の痛い問題が3月に浮上した。中国とタイの間で交渉が続いていた融資条件が折り合わず、タイのプラユット暫定首相が、タイ政府の自己調達資金で、当初予定の3分の1にあたるバンコク~ナコンラチャシマだけを建設すると発表したのだ。そして、残るラオスとの国境があるノンカイまでの区間は無期限延期となった。

 ラオス鉄道の建設については、中国・ラオス両国は2010年に合意がついていたものの、融資条件が決まらずに宙に浮いた状態にあった。しかし、一旦中国が「一帯一路」構想を提唱すると、計画が動き出した。中国政府は「一帯一路」の具体的プロジェクトを正式には発表していないが、東南アジアでは現地政府が中国主導のプロジェクトを推進するための合言葉になっている。

<参考記事>【マニラ発】中国主導のAIIBと日本主導のADBを比べてわかること

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米耐久財コア受注、2月は0.6%増 中東紛争で先行

ワールド

イラン、サウジ・ジュベイルの石化コンビナート攻撃 

ワールド

トルコのイスラエル総領事館前で白昼の銃撃戦、犯人1

ワールド

再送-一部原油現物が最高値、150ドルに迫る 供給
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 3
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 4
    「王はいらない」800万人デモ トランプ政権への怒り…
  • 5
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 6
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 7
    【後編】BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音…
  • 8
    5日間の寝たきりで髪が...ICUに入院した女性を襲っ…
  • 9
    「人間の本性」を見た裁判官が語った、自らの「毒親…
  • 10
    スパイス企業の新戦略...エスビー食品が挑む「食のア…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 8
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 9
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 10
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中