円高・株安が進行、政府は介入を示唆し市場の鎮静化狙う
市場は政府の「口先介入」に対して懐疑的
5月2日、日銀が4月の金融政策決定会合で追加緩和を見送った後、円高・株安が進行している。写真は麻生財務相(左)と黒田日銀総裁、米ワシントンで昨年4月撮影(2016年 ロイター/Mike Theiler)
日銀が4月の金融政策決定会合で追加緩和を見送った後、円高・株安が進行している。米為替報告書で日本が「監視国」に指定されたことに加え、今月下旬の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)を前に、為替介入に踏み切れないとの市場観測が広がっていることも影響している。
麻生太郎財務相は円売り介入辞さずの姿勢を示したが、反転の兆しは見えない。日本政府は「介入」を意識させながら、市場の鎮静化を見守る戦術を取る可能性が高い。
市場が注目する米為替報告書
「明らかに一方的に偏った投機的な動きが見られているので、極めて憂慮している」──。麻生太郎財務相は4月30日夜、羽田空港で記者団に囲まれ、これまでよりも1段階トーンを上げて、円売り介入も辞さない姿勢を示した。
しかし、2日の東京市場ではドル/円が106円台前半まで下落。日経平均株価<.N225>も一時4月12日以来となる1万6000円割れとなり、「口先介入」に対する反応は鈍かった。
背景には、「実弾介入」の可能性について、市場が懐疑的にみていることがある。米財務省が29日に発表した外国為替報告書で、日本は「監視リスト」に指定された。さらにもう1段厳しい「為替操作国」に認定される3要素のうち、2要素に該当していることが明らかとなり「ここで介入すれば、操作国と認定されかねない」(外資系銀関係者)との見方が一挙に市場で多数派を形成することになった。
これに対し、日本の財務省幹部は「(為替報告書が)日本の介入を制限するものではない」との姿勢を崩していない。
ただ、政府部内にも日本が単独介入した際に「米国が『ビナイン・ネグレクト』(静観)してくれる可能性は低い」と指摘する向きもあり、介入の実効性は不透明だ。
また、市場の一部には米為替報告書が批判の対象として、日銀の追加緩和も想定しているのではないかとの思惑も出ている。しかし、日銀内にはこの見方を明確に否定する声が圧倒的に多い。