最新記事

中東

サウジのムハンマド副皇太子が経済改革案発表、石油依存脱却で投資国家目指す

長引く原油安により経済立て直しが喫緊の課題

2016年4月26日(火)10時29分

4月25日、サウジアラビアのムハンマド副皇太子は石油への依存度を低下させ、世界的な投資国家への転身を図る包括的な経済改革案を明らかにした。写真は2015年6月、パリを訪問する同副皇太子(2016年 ロイター/Charles Platiau/File Photo)

サウジアラビアのムハンマド副皇太子は25日、石油への依存度を低下させ、世界的な投資国家への転身を図る包括的な経済改革案を明らかにした。

国防相のほか、経済開発評議会のトップを務める副皇太子は、サウジの長期的な経済計画を指揮している。

副皇太子はこの日、昨年の即位後初となる国民向けテレビインタビューで、野心的な経済改革構想「ビジョン2030」を発表。サウジは原油収入への依存から脱却する必要があると訴え、投資収益を新たな収入源に育てる考えを示した。その上で「2020年には原油がなくても生き残れると思う」と述べた。

サウジの財政方針や経済構造をめぐっては、原油価格が急落し始める2014年以前から持続不可能との指摘がエコノミストらから上がっていたが、長引く原油安により経済立て直しが喫緊の課題となっている。

副皇太子はその中で、公的投資基金(PIF)の資本を6000億リヤル(1600億ドル)から7兆リヤル(2兆ドル)に引き上げると表明。予定している国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)調達資金を元手に、今後はPIFがサウジの海外投資の中核的役割を担うとの考えを示した。「暫定データの分析によると、PIFは世界の投資能力の10%超を支配する見通し」という。

副皇太子はアラムコのIPOで、株式の最大5%を売却する考えを表明。アラムコはエネルギー企業へと生まれ変わるとし、価値は2兆ドル以上に上るとの見方を示した。アラムコはサウジの巨大な原油埋蔵量の権利を握っており、副皇太子は1%の株式売却でも世界最大のIPOとなると述べた。

またアラムコの傘下企業や他の公的企業も上場させる考えを示し、民営化の最大の利益の1つは、透明性向上と汚職抑制への寄与だと述べた。

改革案ではさらに、女性の労働参加の拡大を目指すほか、外国人による長期的な労働・滞在を可能するグリーンカード制度を5年以内に打ち出すことも盛り込んだ。

ムハンマド副皇太子はまた、この構想は原油相場がバレル当たり30ドルの水準を前提としているとしたが、「これを割り込む水準でも対応できるようにした」と明らかにした。一方で、世界の需要が改善していることを踏まえると、「原油が再び30ドルを割り込むことは不可能に近い」との見方を示した。

*内容を追加しました。



[リヤド 25日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中