最新記事

日本人論

【まんが】日本人が宗教に頼らず道徳を身につけられるワケ

2016年4月7日(木)15時57分

封建制とともに生まれた「サムライの共通規範」

 サムライ、すなわち武士は、中世から近世までの「封建制」の日本で、最も権力の強い身分でした。

 封建制とは、主君と臣下との結びつきをもとにした社会制度です。主君は臣下に対して土地の支配を認め、その代わりに臣下は主君に忠誠を誓います(御恩と奉公)。

mangaBushido-chart3.jpg

『まんがで人生が変わる! 武士道――世界を魅了する日本人魂の秘密』より

 新渡戸によると、日本の封建制の始まりは、源頼朝(1147~1199年)が鎌倉幕府を開いたときです。武士である源頼朝が日本を支配したとき、天皇や貴族を中心とする世の中から、武士を中心とする世の中に変わり、封建制も確立されたというわけです(これについては諸説あります)。以後、鎌倉時代、室町時代、安土桃山時代、江戸時代と、武士が主となって政治を動かしました。

 サムライはもともと、戦うことを専門とする人々です。そんな人々が権力を得たうえに、「どんなに卑怯なことをしても勝てばいい」などと考えていては、社会がめちゃくちゃになってしまいます。ゆえに、敵どうしの間でも守られるような、「フェア・プレイ」の精神が必要になりました。

 このフェア・プレイの精神から、サムライが守るべき掟としての「武士道」が生まれます。掟といっても、「するべきこと」や「してはいけないこと」が成文法(文字で書かれた法律)として制定されたわけではありません。サムライたちの生き方をとおして、長い時間をかけて形成された、暗黙の「共通規範」であり、サムライたちの間の一種の常識なのです。

武士道を生んだ3つの思想

 武士道の「起源」は封建制ですが、それとは別に武士道の「源泉」、すなわち武士道を生んだ3つの思想があると新渡戸はいいます。

 それは、近代以前の日本人の思想を作ってきた①仏教、②神道、③儒教です。

mangaBushido-chart4.jpg

『まんがで人生が変わる! 武士道――世界を魅了する日本人魂の秘密』より

①仏教

 仏教は、運命を受け入れること、危険を前にしても心を乱さないこと、生に執着する必要はないこと、そして死を恐れないことを説きます。これらの教えは武士道に、現世の物事に流されない思想としての深みを与えました。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局

ワールド

ポーランドの2つの空港が一時閉鎖、ロシアのウクライ

ワールド

タイとカンボジアが停戦に合意=カンボジア国防省
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中