【まんが】日本人が宗教に頼らず道徳を身につけられるワケ
封建制とともに生まれた「サムライの共通規範」
サムライ、すなわち武士は、中世から近世までの「封建制」の日本で、最も権力の強い身分でした。
封建制とは、主君と臣下との結びつきをもとにした社会制度です。主君は臣下に対して土地の支配を認め、その代わりに臣下は主君に忠誠を誓います(御恩と奉公)。
新渡戸によると、日本の封建制の始まりは、源頼朝(1147~1199年)が鎌倉幕府を開いたときです。武士である源頼朝が日本を支配したとき、天皇や貴族を中心とする世の中から、武士を中心とする世の中に変わり、封建制も確立されたというわけです(これについては諸説あります)。以後、鎌倉時代、室町時代、安土桃山時代、江戸時代と、武士が主となって政治を動かしました。
サムライはもともと、戦うことを専門とする人々です。そんな人々が権力を得たうえに、「どんなに卑怯なことをしても勝てばいい」などと考えていては、社会がめちゃくちゃになってしまいます。ゆえに、敵どうしの間でも守られるような、「フェア・プレイ」の精神が必要になりました。
このフェア・プレイの精神から、サムライが守るべき掟としての「武士道」が生まれます。掟といっても、「するべきこと」や「してはいけないこと」が成文法(文字で書かれた法律)として制定されたわけではありません。サムライたちの生き方をとおして、長い時間をかけて形成された、暗黙の「共通規範」であり、サムライたちの間の一種の常識なのです。
武士道を生んだ3つの思想
武士道の「起源」は封建制ですが、それとは別に武士道の「源泉」、すなわち武士道を生んだ3つの思想があると新渡戸はいいます。
それは、近代以前の日本人の思想を作ってきた①仏教、②神道、③儒教です。
①仏教
仏教は、運命を受け入れること、危険を前にしても心を乱さないこと、生に執着する必要はないこと、そして死を恐れないことを説きます。これらの教えは武士道に、現世の物事に流されない思想としての深みを与えました。