最新記事

中国共産党

「神曲」ラップと「ギャップ萌え」で党宣伝をする中国――若者に迎合し

2016年3月4日(金)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

●なぜ、ベートーベンか?――「ギャップ萌え」

 1980年以降に生まれた中国の若者(80后、バーリン・ホウ)は、日本のアニメと漫画を見て育ってきた(拙著『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』に詳述)。コスプレもそうだったが、日本の「萌え」文化にも染まり、「萌える」のが好きだ。

 その中には、最近日本で流行っているらしい「ギャップ萌え」というのもあるらしい。

【参考記事】中国の党と政府のメディアがSMAP解散騒動を報道する理由

 中国の若者に、「なんでラップとベートーベンなの?」と聞いたところ、「あ、それはですね、ギャップ萌えですよ」と解説してくれた。

 習いたての「ギャップ萌え」などを説明するのも何だが、ふだん抱いていたイメージとまったく異なる側面を見たときに、その「ギャップ」にハッとして魅力を感じることを言うらしい。

 そこで中共の宣伝部としては、現在の最先端の若者の心をつかもうと、「ラップ」に、突然、ラップとは似つかわしくないクラシック音楽のベートーベンを持ってきて、その意外な組み合わせに「ギャップ萌え」を感じてもらおうと苦心したようだ。

 それが、この「中共"神曲"ラップとベートーベンにより"四つの全面"を礼賛」なのである。

中国の官製メディアがこぞって礼賛

 中宣部のテレビ局である中央テレビ局CCTVのネット版CNTVは、中国政府の通信社である「新華社」が、この「神曲」ラップを推薦しているとして、今年2月3日に「これは流行るぞ! 新華社がラップ"新曲"<四つの全面>を推薦してるよ」という特別番組「新聞開講」を組んだ。

 中国の若者に感想を聞いてみたところ、「自作自演だから、流行るはずがないよ」「子供だましだ」「神は死んだ」などという回答が戻ってきた。

 一方では、「新神曲は魔性の洗脳??<四つの全面>を聞いてると、止まらないよ」などというものもある(このウェブサイトは不安定なので、もしアクセスできなかった場合は、お許しいただきたい。)。これは「本当に洗脳されてしまいそう」と、皮肉っているのかもしれない。

若者文化にすがる中宣部

 また、「深改組(中央全面深化改革領導小組)」(組長:習近平)に関して「中央深改組が成立してから満2年になるよ 中央テレビ局がラップでその成果を放映」という情報を、アリババが買収した南早(南華早報)のウェブサイトが報道している(このウェブサイトは開くまでに時間がかかる)。

 動画ではないが、ほかにも「虎退治(反腐敗運動)をする習近平」をアニメで描いたものなどもある。まさに、このような「子供だまし」のものなど、若者でさえ見そうにないが、それでも、なんとしても若者に受けようという意図がありありだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ホリデーシーズンの売上高は約4%増=ビザとマスタ

ビジネス

スペイン、ドイツの輸出先トップ10に復帰へ 経済成

ビジネス

ノボノルディスク株が7.5%急騰、米当局が肥満症治

ワールド

ロシアがウクライナを大規模攻撃、3人死亡 各地で停
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中