最新記事

フロン排出抑制法

オフィスエアコンの定期点検で省エネ・省コストを実現

メンテナンスなしで使い続ければ消費電力は急増する

PR

2016年3月31日(木)11時00分

世界はさらに一歩踏み込んだ温暖化対策へと舵を切った Michelle Schiro-iStock.

 昨年11月、パリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議)で、世界は地球温暖化対策の歴史的転換点とも言える合意にいたった。今世紀後半には、世界全体で温室効果ガスの人工的な排出量を森林などの自然が吸収できる量と均衡させる――つまり温室効果ガスの排出を"実質ゼロ"にすることを目指す国際ルール「パリ協定」が採択されたのだ。各国はこれまでよりさらに踏み込んだ温暖化対策を求められることになった。

 こうした世界的な流れを受けて、日本の温暖化対策の初めての指針となる「地球温暖化対策計画」が今月、政府審議会で策定された。計画では、温室効果ガスを2050年までに80%削減するという長期目標が掲げられ、業務・オフィス部門でも30年までに約40%の削減目標が設定されるなど、各部門に先進的な取り組みを求めている。今年5月に開催される伊勢志摩サミットを見越して、国際的に見て遜色のない行動計画を示したかった政府の思惑もあったようだ。

 これからの日本社会で、温暖化対策がますます重要な課題になることは間違いない。そして温暖化対策計画に先駆けて昨年4月に施行されたのが、オフィスのエアコンや業務用の冷蔵庫など空調機器の点検を各企業に義務付けた「フロン排出抑制法」(以下、フロン法)だ。現在冷媒として広く使用されている代替フロンを漏れ出させないように空調機器を管理することがフロン法の趣旨となっている。

 フロン法では、業務用の空調機器を使用する企業の担当者が「管理者」となり、対象となる機器のリスト(設備管理台帳)を作成したり、3カ月に一度の目視による「簡易点検」や有資格者による1~3年に1回の「定期点検」を実施することを義務付けている。こうした管理を怠り、空調機器からフロンを漏出させた場合は、管理者に対する罰則規定もある。

 温暖化対策が地球レベルの課題だとはいえ、このフロン法への対応には当然ながら企業のコスト負担が伴う。法律自体の企業の認知度は高いものの、法施行に向けた事前の準備期間が短かったこともあり、実際の対応はかなり遅れている。対象事業者のうちフロン法で義務付けられた点検等を実施できているのは2~3割程度にとどまっているという。

daikin01-02.jpg

オフィスのエアコンの定期点検がフロン法で義務付けられた monkeybusinessimages-iStock.

エアコンの定期点検は省エネ・省コストにもつながる

 空調機器メーカー最大手、ダイキン工業のグループ企業でエンジニアリング会社のダイキンエアテクノは、昨年のフロン法施行と同時に、管理者の機器リストの作成や点検業務の実施など法律に基づく実務作業を一括して代行するサービスを開始した。

 点検サービスを提供するうえでダイキンエアテクノが特に強調しているのは、フロン法に基づく空調機器の点検・管理がそのまま「省エネ・省コスト」対策になるというメリットだ。メンテナンスをしないで空調機器をそのまま使い続けると、フィルターの汚れによって消費電力は急激に高くなる。業務用の暖房機器をメンテナンスなしで3年間使い続けると、消費電力が2倍に跳ね上がるというデータもある。空調機器を定期的に点検し、適切にフィルターの清掃などを行うことは、日常的な省エネルギーへと繋がる。また猛暑に突然エアコンが壊れて、高額の修理コストがかかるような事態も防ぐことができる。

 ダイキンエアテクノ広報担当者は、昨年施行のフロン法について、「企業にエアコンへの関心を持ってもらう良い機会になっている」と話している。「法律を順守して定期的に点検を実施し、機器の状態を良好に維持すれば、省エネ・省コストという企業にとってのメリットもあることをお伝えしている」。

 日常のオフィスでエアコンの状態を気にかける機会は、どこの企業でもそれ程多くはない。今回のフロン法は、オフィスで使っているエアコンや冷蔵庫が、環境にどんな影響を与えているか見つめ直すきっかけにもなりそうだ。

フロン排出抑制法について詳しくはこちら

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中