イギリスで難民の子供900人が行方不明に
保護者とはぐれた子供が、さらわれたり自ら逃げ出したりして危険にさらされている
無防備 借金を返すために違法に働くなど、子供にも悲惨な事情がある(写真は2009年、ルーマニア難民) Cathal McNaughton-REUTERS
亡命を希望してイギリスに到着した子どもたち数百人が、この1年で行方不明になっている──英オブザーバー紙が先週末に報じた。
同紙がイングランドとウェールズの132の自治体に情報公開請求を行って得た回答によると、今年1~9月にかけて、少なくとも340人の子供たちが姿を消し、過去5年間では、900人以上の亡命希望の子供たちが行方不明になっているという。
英国赤十字社によると、推定12万6000人の難民が現在、イギリスで生活している。2014年には3万1400人の亡命申請を受け付けたが、そのうち1945人はイギリスに到着する前に親からはぐれた子供たち。最も多かったのは、アルバニア、エリトリア、アフガニスタン、シリア、ベトナム、そしてイランから到着した子供たちだ。
自治体は、亡命希望の子供たちが、人身売買業者によって里親の家や一時保護施設から連れ去られ、売春や強制労働のために売買されているのではないか、あるいはホームレス生活や貧困に苦しんでいるのではないかと懸念している。
同じくオブザーバー紙によれば、行方不明になっている子供たちにはベトナム人が多く、人身売買されているリスクも最も高い。過去9カ月間で少なくとも48人のベトナムの子供たちが、イングランドとウェールズから姿を消している。行方不明になった子供たちの情報提供サイト「Missing Kids UK」のデータベースも同様の数字を示している。ウェブサイトで紹介されている171人の子供・若者のうち、48人がベトナム人の名前を持っており、その割合はウェブサイト全体の4分の1以上を占める。
なぜベトナム人の子供は行方不明になりやすいのか。BBCは2013年放送の番組でその原因を追った。それによれば、ベトナムの子供たちは多額の借金を背負っており、それを返済するためにあえて里親の元や養護施設を脱け出して「捕獲者」を見つけているケースが多いのだという。
イギリスで奴隷になる子供たち
アルバニアの子供たちもリスクが高い。児童チャリティー団体「Barnardo's」(バーナードズ)は10月17日、イギリスで奴隷として強制労働させられているアルバニアの子供の数が増加していると発表した。同団体のジェイヴド・カーンCEOによれば、子供の一部は建設現場を中心に強制労働させられているが、ほとんどは売春などの犯罪行為に利用されているという。
カーンは、アルバニアの子供たちの何人が奴隷として働かされているのかを明らかにしなかったが、今年の第3四半期に亡命を申請したアルバニア人は382人で、2014年の同時期より7パーセント増えている。
イギリスのチャリティー団体は、保護者のいない未成年者たちの身の安全を懸念しており、自治体が子供たちに自分の権利について教える取り組みを強化すべきだと考えている。英国赤十字社の難民サービス開発マネージャー、ヒューゴ・トリストラムは本誌の取材に対する回答でこう述べた。「ここ数カ月、保護者のいない子供の亡命希望者が急増している」