最新記事

東アジア

日中韓関係と日本の課題

2015年11月6日(金)17時30分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 それを今では、中韓両国が連携して、ユネスコの世界記憶遺産に登録しようとしている。

日本の課題と今後

 さて、最も難しい日本の課題と今後に関して言及しなければならない。

 以下、箇条書きにしてみよう。

 1. どんなに日中韓関係の改善を試みたところで、中韓、特に中国が歴史問題を引き下げることは絶対にない。日本は、そのことだけは覚悟しておかなければならない。

 2. 一方で、掌(てのひら)を返したように、韓国から帰国した李克強首相は、4日、中国を訪問している経団連の榊原定征会長ら、日中経済協会のメンバーと会談した。日本の経済界の訪中は毎年行われているものの、中国の首相との直接の会談は6年ぶりのことだ。これは明らかに日中韓首脳会談という枠組みの再開と関係している。

 3. もっとも一方では、中国は経済の低迷に悩んでいるのも事実で、金融においても人民元の国際化など海外拡張ばかりを重視し、国内の貧富の格差や高齢化問題などを疎かにしている傾向にあり、その解決は焦眉の急だ。10月下旬に北京で開催された五中全会(第18回中国共産党大会 第五期中央委員会全体会議)において、来年3月から始まる第13次五カ年計画が決議された。それは中国の「二つの百年」のうちの一つである、2020年までの「中国の夢」「中華民族の復興」をめざしたものである。

 4. この中で中国はAIIBや一帯一路以外に、中国発のイノベーションと人材開発を強く打ち出している。中国の大学を世界一流の大学に持っていく「教育強国」戦略も、五カ年計画の中の一つだ。しかし、手っ取り早い方法として、イノベーションと人材開発に、ぜひとも日本の力がほしい。日本独自の技術水準はやはり高い。在米中国人留学生の博士たちが持ち帰ったコピペ技術とは、堅実性も発想も異なる。企業スパイとか特許侵害といった糾弾を受ける危険性もない。だから李克強首相は日本の経済界代表に「ビジネスのパートナーとして、日本の経済界に期待する」と述べ、中国への投資拡大を呼びかけた。榊原会長は、日本から中国への投資が減少していることについて、「近年の政治・外交関係が影響している」と指摘し、両国関係のさらなる改善に期待を寄せたようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日銀、25年度GDPを小幅上方修正の可能性 関税影

ビジネス

日経平均は大幅反発、初の4万9000円 政局不透明

ワールド

豪、中国軍機の照明弾投下に抗議 南シナ海哨戒中に「

ワールド

ゼレンスキー氏、パトリオット・システム25基購入契
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「実は避けるべき」一品とは?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 7
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 8
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 9
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 10
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中