最新記事

ビジネス戦略

インドネシア高速鉄道、中国の計算

2015年10月5日(月)17時08分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 これは、いうならば「デキ」レースだ。

 日本政府は4月22日の、習主席によるインドネシア訪問と、その時になされた両政府間の約束を、十分には注目していなかったのだろうか?

 あるいは、これはあくまでも中国の一帯一路構想の中の一つにすぎないと思ってしまったのだろうか?

 中国の精密に計算された戦略は、その後に佳境を迎える。

 今年8月10日、中国政府の発展改革委員会の徐紹史主任はインドネシアを訪れ、ジョコ大統領と会談し、高速鉄道プロジェクトに関して話し合いをした。

 その2日後の8月12日に、ジョコ大統領が就任後初めての内閣改造に踏み切ったのである。

 この内閣改造で解任された閣僚の中に、親日派のラフマット・ゴーベル貿易大臣がいることに注目しなければならない。

 その一方で、徐紹史主任とも会談した親中派のリニ・スマルノ(女性)国営企業省大臣は留任した。

 ここがポイントだ。

 翌8月13日、駐インドネシアの謝鋒中国大使はジャカルタで開催された「急速に発展した中国高速鉄道」展覧会で祝辞を述べたが、同日、リニ・スマルノ国営企業大臣も展覧会に出席し、中国高速鉄道を支持するコメントを出している。

 そして国有企業省の記者会見で「G2G(政府対政府)」ではなく、「B2B(企業対企業)」で高速鉄道プロジェクトを推進していきたいと強調した(と中国メディアが報道した)。

 中国は8月の入札時に「中国とインドネシアの企業が連合して合資企業を誕生させ、インドネシア企業の持ち株を60%、中国側企業が40%とする」という、インドネシア政府に有利な条件を提示している。

 これを「偶然」と解釈するのか、それとも「デキ」レースととらえるのか。

 その後の流れから行けば、「偶然」と解釈するには無理があるだろう。

 デキ過ぎている!

損して得獲れ

 中国がこのような条件でプロジェクトを実行することは損失ばかりで、「実行不可能だろう」と日本政府は思って(期待して?)いるかもしれない。

 しかし、数千年におよぶ「策略」の歴史を持つ中国。

 結果的に損するようなことはしない。

 中国の国有企業が儲かるようにきちんと計算してあるのと、何よりも一帯一路の足掛かりをインドネシアにつけておくことは、この後の長期的な海洋戦略で欠かせない。どんなに高額なものになっても、投資は惜しまないだろう。

 アメリカのカリフォルニア州の「ロサンゼルス‐サンディエゴ」間の鉄道敷設に関しても、中国はすでにカリフォルニア州と意向書を取り交わしている。カリフォルニアは早くから親中的な華人華僑で陣固めをしてあるので、ビジネスは西海岸から始めるのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

UAE、米主導のホルムズ護衛に参加の可能性 協議継

ビジネス

米中古住宅仮契約指数、2月は1.8%上昇 インフレ

ワールド

イスラエル外相、イランとの戦い「すでに勝利」、目標

ワールド

トランプ氏訪中延期、イラン情勢受け 習氏との会談5
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 3
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 8
    「目のやり場に困る...」グウィネス・パルトロウの「…
  • 9
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 10
    戦争反対から一変...湾岸諸国が望む「イランの脅威」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 8
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中