ドローンの脅威と生きる市民の本音
アメリカの無人機攻撃で家族や友人を殺されたパキスタンやイエメンの人々の悲痛な叫び
日常の一部 市民を殺すドローン攻撃を批判する壁画(イエメン) Khaled Abdullah Ali Al Mahdi-Reuters
2014年に英ガーディアン紙からカメラを託されたとき、モハメド・サレ・タウイマンは13歳だった。イエメンのマーリブ州に住む彼は、ドローン(無人機)の飛び交う下での暮らしを記録するよう頼まれた。
ラクダ飼いの父と10代だった兄は、11年にアメリカのドローン攻撃で殺された。モハメドたちは頭上を飛び交うドローンを「死の機械」と呼んで恐れている。「ドローンの夢を見てうなされる子も多い。精神疾患になった子もいる」と、彼は話した。「ここは地獄になった」
そして15年1月、モハメドもドローンに殺された。13歳の少年を国際テロ組織アルカイダの戦闘員と判断したのか、とガーディアンは米国防総省とCIA(米中央情報局)に質問した。回答はない。
彼の死は、ドローン攻撃が生む数々の悲劇の1つにすぎない。バラク・オバマ米大統領は就任3日後の09年1月23日、ドローン攻撃を開始。パキスタン北西部の北ワジリスタンで、少なくとも9人の民間人を殺した。以後、市場や民家、葬式や結婚式の会場などが攻撃を受け、英NPOの調査報道協会によれば2400人以上が死亡している。
人々は子供を学校に行かせなくなった。大勢が集まる行事にも行かない。「彼らは一日中怯えて暮らしている」と、12年の報告書「ドローン攻撃下の生活」の研究チームの1人、サラ・ナッキーは米ニュース専門ケーブル局MSNBCに語った。
実際、ドローンが飛び交うなかで日常生活を送る市民はどう感じているのか。パキスタンとイエメンの人々の声を紹介しよう──。
ズバイル・レーマン
「青空は嫌いだ。曇りのほうがいい。曇りだとドローンが飛ばないから。僕たちは24時間、騒音を聞き続けている」(13年、父親と9歳の妹と共に米議会で証言した北ワジリスタンの13歳の少年。祖母は前年10月、畑でオクラを収穫中に殺された)
ラフィク・ウル・レーマン
「母がなぜ狙われたのか、教えてほしい。生徒たちに何と教えたらいいのか。ドローンはもう来ないと言ってやりたいのに」(ズバイルの父で小学校教師)