最新記事

中国社会

中国富裕層の国外大脱出が始まった

お金持ちの約3分の2が既に国外移住済みか移住を計画中。教育や大気汚染以外のもう1つの理由とは

2014年2月24日(月)12時31分
ベンジャミン・カールソン

繁栄の陰で 経済成長の恩恵に最も浴しているはずの富裕層だが(北京) Kim Kyung-Hoon-Reuters

 国や経済の先行きに不安を抱くアメリカ人が「カナダに移住してやる!」などと口にするのは、半ばお約束。しかし、実際にアメリカを出ていく人はめったにいない。

 その点、中国人は違う。近年、特に富裕層の間で、より良い暮らしを求めて国外に移り住む人が増えている。最も人気のある移住先はアメリカだ。

 中国の資産家393人を対象にした民間研究所「胡潤研究院」のレポートによれば、中国の富裕層(資産1000万元〔約1億7000万円〕以上)の64%が既に国外に移住したか、移住を計画している。また、超富裕層(資産1億元〔約17億円〕以上)の3分の1は、国外に拠点を持っているという。

 子供を留学させたいと考える富裕層の割合も80%に上る。留学先としては、大学はアメリカが1番人気、高校はイギリスが1番人気、アメリカが2番人気だ。中国のエリートたちは、自国の硬直的な教育システムを評価していないのだ。

「裸官」たたきの影響も

 それ以上に注目すべきなのは、アメリカの永住権を取得する中国人が増えていることだ。「投資永住権」(アメリカでの事業に100万ドル以上投資した人に与えられる)を取得した中国人の数は、10年は772人だったのが、12年はその8倍近い6124人に膨れ上がった。

 なぜ、中国の経済的台頭の恩恵に最も浴しているはずの富裕層が国を出ていくのか。子供の教育以外の分かりやすい理由としては、環境汚染がある。深刻な大気汚染と水質の悪さに不満を述べる中国人は多い。

 一方、表面に見えにくい理由もある。それは、政府が推し進める反汚職キャンペーンだ。習近平(シー・チンピン)国家主席の下、中国当局はこの1年、共産党の実力者を立て続けに汚職で摘発してきた。

 習は先月、反汚職キャンペーンをさらに強化し、配偶者や子供を国外に住ませている人物──「裸官」と呼ばれる──の昇進禁止を打ち出した。国外の家族のために何かとお金の掛かる裸官は、特に汚職に走りやすいと見なされている。ある共産党当局者が国営・新華社通信に述べたところによれば、「経済犯罪の約40%、そのなかでも汚職と横領の80%近くに、裸官が関わっている」という。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

情報BOX:米相互関税、各国首脳の反応

ビジネス

テスラ世界販売、第1四半期13%減 マスク氏への反

ワールド

日本の相互関税24%、トランプ氏コメに言及 安倍元

ビジネス

焦点:トランプ関税で世界経済は一段と地盤沈下か、国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中